歪みと距離 8 ページ8
「美優紀、今日カラオケ行こ？」
「あー、うんいいよ」
クラスは同じなのに、彩は挨拶を交わすどころか目も合わせてくれない。
そうなったのは、突然だった。
金曜日にSNSから彼女の名前が消え、月曜日には今のようになっていた。
何を言ってもはぐらかすばっかりで、何も変わらなかった。
「みるきー、失恋ソングばっかりやん！」
「え？そう？」
「どうかしたの？なんか元気ないから」
だからこうしてこの2人は、誘ってくれたのかな。
「どうか…したのかな」
わからない。彩を失って、けれど1人じゃなくて。
どうして私はこんなにも落胆しているのだろう。
「何かあったら言いなよ」
「…好きってどういうこと？」
声に出たのはそんな質問だった。
「え？恋してるの？」
「いや、そういうんじゃないけど」
「ほんとに？」
「…それが分かんないのかも」
これは恋なのか。
それとも違うのか。
「話してよ」
「え？」
「みるきーのこと、変えてくれた人なんでしょ？」
さすが我が友だ。
あんなかつての私の友達でいてくれた人だ。
そんな友人に、こんな話をするのは間違っているのかも知れない。
けれど、口は勝手に開いた。
「私、単に性的に惹かれてるだけなのかな…」
話終わった後の、自らの結論は、案外正当なものだった。
だって彩との行為は一番気持ち良かったから。
優しさがあって、暖かさがあって…
「それだけじゃないでしょ」
「え？」
「本当は気づいてるんでしょ？」
否定出来ないのは多分、気づいてる。
私はこの気持ちを知っている。
それでも、認めないのは認めたくないのは…いや、認められないのは散々彼女を利用してきたから。
彩の気持ちも考えずに。
だから…いっそ、この気持ちは捨ててしまいたい。
どこか深く、闇の中に。
いつの間にか止まらなくなった涙を、友達はまるで小さい子をあやすかのように抱きしめ、拭ってくれたいた。
久しぶりだな、こんなに泣いたのは。
多分明日、目晴れちゃうだろうな。
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作者名：ハル | 作成日時：2017年1月2日 19時
