遭遇 ページ30
とは言ってみたものの、そこまで気まずさはない。どちらかと言うと久しぶりに話したなぁって感じだ。
気まずさを感じているのは有人の方である。
何年も会話しなかった義理の姉。しかも向こうは(多分)こちらを嫌っている。
気まずさ天元突破であった。
「FF本戦進出おめでとう」
「…ありがとうございます」
Aも微妙に気まずくなってきたのでお礼だけ言ってさっさと退散しようとする。
「…話はそれだけだ」
くるりと踵を返して進もうとすると引き止められる。
「義姉さん…その、家には帰らないんですか？」
言った直後に、有人は失敗した！と思った。
家の話題は禁句。佐久間達から散々聞かされたし有人だって分かっているつもりだ。
けれどあまりの気まずさに口走ってしまった。
ドキドキしながら次の言葉を待つとAは予想とは違う言葉をかけた。
「…いつか戻ろうとは思っている」
「…え？」
「まだ帝国は不安定なところもある。もう少し安定してから時期を見て戻る予定だ。おそらくFFが終わってから…って何だその顔は」
予想にない前向きな返事にぽかんと間抜けな顔を晒してしまった。
「お前は鬼道の跡取りだろう。あまり隙は見せるものじゃないぞ。それと…父にも近日中に戻る、と伝えてくれ」
「…はい。楽しみにしています」
有人は自分が笑っていることに気づいた。Aも笑っている。
何だか数年前に戻ったような気分になった。
「鬼道と会った!?大丈夫だったか!?」
「至って平和に会話をしてきた」
「喧嘩してきただと!?」
「違う」
寮に戻って話をすると、佐久間は途端に焦りだし荒ぶり始めた。肩をがくがくとゆすられる。皆もまるで嘘を言っているような顔で見てくるのが非常に不本意である。
不動は相変わらず我関せずで助けは望めなさそうだ。諦めかけたその時、風丸が助け舟を出してくれた。
「鬼道とは何を話してきたんだ？」
「今度の試合に来ないか、と誘われたんだ」
「誘われた!?」
「話の流れだ」
佐久間を引っぺがして風丸に向き直る。
最初は気まずそうだったと話すと鬼道らしいと笑っていた。
雷門に転校してきた直後もそうだったらしい。
「有人はコミュニケーション能力に難があるのか」
「そういうわけではないと思うぞ」
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作者名：むめい | 作成日時：2023年2月23日 11時
