125:取り返して ページ26
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『あの、ありがとうございました…』
「ん」
立ち上がって、体操服の上を体育ズボンに入れる。
帽子もきちんと被り直したのにツバの部分がすぐに上がって、ホソク先輩に奪われる。
『え、返してください』
「取り返してみて」
『ホソク先輩っ、戻らないと…!』
「もうちょっと大丈夫だよ」
走ってる訳でも素早い訳でもないのに、捉えどころのない動きで避けられる。
後ろ歩きなんてしながら、なんか楽しそう。
『どうして笑って、あ!』
帽子の端を掴めたと思ったら、保健室のベッド仕切りのカーテンが、真後ろでシャっと閉まった。
ホソク先輩は帽子から私の手首に持ち直す。そしてその腕に誘導されるがままベッドに腰掛けてしまった。
「俺が先生とヨンジュナたちには伝えておくから。寝た方が良い」
『え…私だけそんな事できません』
「Aだけにそんな提案をするのは、Aがしんどそうだからだよ。
色々抱えて、寝ないで溜め込んで。俺を遠ざけたいなら、自己管理をちゃんとしてよ」
『そういうつもりじゃ…』
「グラウンドの中央で何度もクラってしてたでしょ。もう無視できない。
今少し休んだって、誰もAを責めないから」
『ダメです。私は準備でも足引っ張って、上手く出来なくて…
本当にヨンジュン先輩とジ、ジミンくんに迷惑ばかりかけてるんです。折角三人でするって認めてもらったのに…これじゃ、生徒会の全員に申し訳ないです』
「みんなそんな事思わないよ。とにかく今は寝て」
『いやです』
「寝て」
『グラウンドに戻ります』
「それともまた…眠れなくなってるの?」
図星を指さされてしまって、無言でホソク先輩の顔を見つめる。
自分のことじゃないのに、辛そうな表情。
視線だけを下に落とすと、身体が優しい体温に包まれた。
「こうしたら少しは落ち着く?俺が聞くから、全部吐き出して。
大丈夫じゃないって言って良いし、助けてって言っていいんだから。
Aはそのへん、ヘタすぎ」
凄い…
ホソク先輩に抱きしめてもらうと、強張ってたとこから力が抜けて、程よい眠気が襲ってくる。
二人で隠れて、いっぱいキスして…あの時は、全てが上手くいってる気がしてた。
けれど心は今も白く波立っていて、思わず背中に手を回してしまう。
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Suzy(プロフ) - あさなさなさん» 💜💛♥ (3月7日 1時) (レス) id: f57ab1c531 (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - Suzyさん» コメントありがとうございます!ちょこっと攻めました…!笑 (3月5日 21時) (レス) @page48 id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
Suzy(プロフ) - ソクジナの攻め💛楽しみです(^_<)-☆ (3月3日 2時) (レス) id: f57ab1c531 (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - るるさん» ご期待に応えられるような更新だったでしょうか…(ドキドキ) Xは(@asana_sana16)です。鍵付・成人表記があれば大丈夫です!興味を持っていただきありがとうございます! (2月2日 21時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 久しぶりの更新ありがとうございます!!めっちゃ楽しみにしてましたー!!Mくんとのこれからがどんな風になるのかドキドキします…!お話変わるのですがあさなさなさんはXやってますか?あればフォローしたいので教えて欲しいです! (1月31日 21時) (レス) id: 345da165ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あさなさな | 作成日時:2023年11月23日 0時