スターレベルテスト4 ページ5
「もちろんだよ、ここ座りな」
遠慮がちに聞いてきた彼は私の返答を受けて嬉しそうに席に腰をかけた。ますます可愛い。
「日本から来ました、16歳のタクトです。Aさんですか？」
「ヒョンでいいよ、22歳でカナダ出身です。よろしくね」
「ヒョン、いきなり失礼かもしれないんですけど、すごくかっこいいです。ボク人生こんなに顔が綺麗な人に会ったことないです」
赤ちゃんだと思っていた彼は、意外とお世辞がうまいらしい。故郷を離れ単身で異国に渡りもがく中で、世渡り術を覚えたのかもしれない。
彼がそこまで器用ではなく、思ったことをそのまま口に出す素直な人間であることまだ知らなかった私は、6つも年下の彼に密かに感心した。
「赤ちゃんかと思ったけど撤回するね、その歳でそこまで気遣いができるなんて大したもんだよ。僕が中学生の時なんて周りなんて気にせず好き勝手過ごしてたから...」
「あ、あかちゃん...？いえ、ボクは상남자(サンナムジャ)です」
「サンナムジャ？漢の中の漢ってこと？そういうコンセプトで行くように言われてるんだね...」
勘違いから一方的にタクトを労う私と、まだ韓国語を理解しきれていないタクトが、やや意思疎通が図れていない会話を繰り広げる中で、新しい練習生たちが次々と現れた。
Kグループはやたらゴツく勝ち気な子がいたり、かと思えば大人の色気漂うお兄様もいた。
中華勢は皆スタイルがお化けで、踊った時に手足が絡まらないのか不思議なくらいだった。
「いいな、身長高くて顔もかっこいいなんて羨ましいです」
「タクトも綺麗な顔してるよ、身長もこれから伸びるんだし自信持ちな」
ここにいる数多くの練習生の中で、一番を争うほどの端正な顔立ちを持つ本人に言われても素直に喜べないが、キョトンとしたAの顔を見ると、本心で言っているようで期待してしまう。
タクトは照れた笑みを浮かべながら、小さな声でお礼を呟いた。
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タクトと同じく日本出身のユキとオウスケもこちらに合流し、後ろに座っていた上海チームとも軽く挨拶を交わしてお互いに自己紹介をしていたら、「おーっ」と全参加者から驚きと感嘆の混じった声が空間に響いた。
何事かと思い正面を向くと、一際オーラを放つ好青年がいた。
「ソン、ハンビン？」
モニターに映し出された名前を呟くと、聞こえるはずもないのに彼の眼差しが私をまっすぐ射抜いた気がした。
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作者名：すいみ | 作成日時：2023年3月12日 3時
