シグナルソングテスト1 ページ28
ユジンはあの日だけは早くに部屋に戻って休んだが、次の日からはまた練習を再開した。
熱は下がってもしんどさは抜けないようで度々休憩を挟むことはあったが、諦めることはせずひたむきに練習に取り組んだ。
私も自分の練習を行いながら、ユジンに尋ねられた時に可能な限りのサポートを行った。
ただ、ここでどれだけ完成度を高めても、結局は当日のテストでどれくらい練習したものを発揮できるかにかかっている。
私は、ユジンがテストで悔いのない結果を残せるように祈ることしかできなかった。
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そして迎えたシグナルソングテスト当日。
私達はグループ別に部屋を分けられ、呼ばれた順に一人ずつ評価を受けに行った。どうやらスターレベルが低い順からテストが行われるらしい。
今回もテストの結果を受けたベネフィットがあるみたいだが、私はそれよりも頑張ってきた子たちが皆全力を出し切ってパフォーマンスができるかどうかが重要だった。そこにKグループとGグループも関係ない。
だからタクトが星を一つ持ち帰った時は自分のことのように嬉しかったし、パフォーマンスがうまくいかず涙する練習生を見ると胸が痛かった。
隣に座っていたジェイは自信が無いのか不安げな表情を浮かべており、ケイタと2人で励まし続けた。
皆んなが笑顔で帰って来られればいいのに。
私はそう思いながら、一人一人の背中を見送った。
「次、パク・A練習生!」
「はい」
ついに私の名前が呼ばれた。Gグループ3スターのトップバッターだ。
後列に待機していた私が立ち上がると、「Aファイティン!」「Aヒョン Let's go!」と部屋全体が声援に包まれる。皆の勢いに気恥ずかしさを覚えながら、練習生の間を進んでいた時、
「A」
足元から小さな声で名前を呼ばれた。
周りの声に掻き消されてしまうくらい本当に小さな声だったが、その呼びかけはしっかり私の耳に届いた。
声の主が誰なのかなんて確認しなくても分かった、だって何年も共に過ごした大事な"弟"だから。
少し下に視線を向けマシューと目が合うと、何だかとても久しぶりに彼の顔を見た気がして、嬉しくなってしまい破顔した。そして私も小さな声で言葉を返す。
「いってきます」
私の声がしっかり届いたのか、マシューは私の知っている可愛らしい笑顔でテストに向かう私を見送った。
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作者名:すいみ | 作成日時:2023年3月12日 3時