シグナルソング練習19 ページ27
マシューのことは気がかりだったが、インタビュー収録、練習等が続くと他のことを考える余裕がないほど慌ただしくなった。
歌唱レッスンは昨日のヨンジュン先生によるダンスレッスンほど絞られることもなく平和に終えることができたが、レベル毎の自主練では歌いながら踊ることの難しさを痛感した。
皆とは根本的に体力と経験に差があるため、一朝一夕の努力では皆に到底追いつかない。息を切らしながらも休まずにパフォーマンスの練習を続けた。
私は夢を抱いてこのオーディションに参加している訳ではないため、無理なら無理と諦めてしまっても良かった。
しかし、出来ないものをそのままにしてしまう自分自身のことが許せず、自然と練習に熱が入ってしまう。
ふとしたときに、ここまで必死になっている自分自身が不思議だった。
3スターとの自主練を終えると次はユジンと合流し夜中まで練習を続け、今日も私の部屋に泊まりたいというユジンの懇願を断固拒否し部屋に送り届ける。今日は無事部屋の鍵が開いていたため不服そうなユジンをルームメイト達に預け、そそくさと自分の部屋に戻った。
時刻は3時を回っていた。
また今日もあまり寝られないかなと思いながら、キャリーバックの上に置いていたマシューからの差し入れを眺めていた。
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一日一日が急速に過ぎて行き、テストを目前に控えた頃だった。
「ユジナ...ちょっと休もうか」
ユジンが体調を崩した。
見るからにフラフラしているし、額に手を当てると熱があるようだった。無理が祟ったのかもしれない。
練習室の角で座り込むと、近くで練習していたギュビンやスンオンが心配して近付いてくる。
「ユジン昨日の夜から具合悪そうだったよね」
「そうだったの?全然気が付かなくてごめんね」
「...俺が言わなかっただけだから、Aヒョンが謝ることじゃない」
喋るのも辛そうなユジンを見ていると、練習どころではなさそうだ。
スンオンが今日はもう休んだ方がいいことを提案すると、ユジンは素直に賛同した。
「僕連れて行くよ。ほら、ユジン行こう」
立ち上がってユジンに呼び掛けると、彼は俯いたまま私の手を取り立ち上がった。そして2人に見守られ練習室を後にする。
廊下に出るとユジンは耐えていた涙を溢し、繋いでいない方の手で顔を覆った。もしかしたらずっと泣くのを我慢していたのかもしれない。
私は思わず繋いでいた手を解いて、彼を優しく抱きしめた。
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作者名:すいみ | 作成日時:2023年3月12日 3時