シグナルソング練習16 ページ24
「ゆ、ユジナ、びっくりした...どうしたの？」
正直足音に驚きすぎて心臓が止まるかと思ったが、瞳を潤ませるユジンを見たら私の心臓なんて二の次だ。泣きそうな彼に駆け寄ると、彼はポツポツと事情を説明してくれた。
「部屋の鍵...閉まってた...」
「えっ！戻ること言わなかったの？」
「昨日別の部屋で寝ちゃったから、今日もそうなんだと思ったのかも」
「あちゃー、どうしようか」
スタッフ達はもう寝てるだろうから彼らに助けを求めることはできない。部屋の中の子を起こすことを提案したら、寝起きが悪いから起きてもらえるか分からないとユジンは眉を下げて話す。希望が絶たれた。
「ヒョンって何人部屋？」
「あー...えーとね...」
「ベッド余ってたらそこで寝ちゃダメかな」
実は余ってる。なんと三つも。
それでも彼を部屋に迎え入れるのに抵抗があるのは、私が誰にもバレてはいけない事情があるからだ。
それに彼が中学生だということを踏まえると、彼を部屋に入れるなんて非常に咎められるべきことをしているのではないかという気持ちになる。状況が違えば犯罪だ。
だが目を潤ませ本日の寝床を欲している彼はそんな事情も露知らず。ここで断ったら彼はこの冷え切った廊下で寝ることになるかもしれない。それはできれば避けたい事態だった。
結局私は罪悪感を感じながらも彼を見捨てることはできず、彼の救世主となることにした。
「実は...一人部屋なんだ」
「そうだったの！？そんなことあるんだ！」
「たまたまね、だから今日は特別に部屋を貸してあげる」
今夜の寝床を無事確保できたユジンは、安堵からかまた泣きそうな顔で「ヒョン〜ありがとう〜」と告げた。
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ユジンにシャワーと宿舎から支給されたパジャマ(着心地が悪くて一度も使っていない)を貸し出し、自分は朝シャワーを浴びることにしてさっさと自分のベットに入る。
彼が部屋に足を踏み入れる瞬間まで正直自分の選択に後悔していたが、仲の良い"ヒョン"として困っている弟を助けただけじゃないかと開き直ることにした。
ユジンがこのことを話して周りに私が一人部屋だとバレてももう構わない。
だが一つ懸念事項がある。
マシューだけにはこのことは知られたくない。なぜなら軽蔑されそうだから。
元々無かった年上の威厳が崩れ去るのが目に見える。
結局色々考え込んでいたら、気づいたら私は夢の中へと旅立っていた。
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作者名：すいみ | 作成日時：2023年3月12日 3時
