シグナルソング練習8 ページ16
一通り振り入れを終えると、次はグループ毎で曲に合わせた練習に移った。
Kグループが先に呼ばれ、先ほど習った振りを披露する。
流石と言うべきか、Kグループは皆覚えが早く既に教えられた振り付けを吸収して自分のものにしている子が多かった。
「次、Gグループ!」
私たちの番になり、鑑賞体勢から立ち上がって各々適度な距離感をとって部屋中に広がった。
「ズーハオ、ちょっと後ろ失礼するよ」
「A、何してるの?」
「しー!声出さないで、見つかっちゃうから」
「はいAー、君はここに来なさい」
なるべくひっそり練習を終えたかった私は、ズーハオの影に隠れて存在を消すという作戦を実行したものの、たった数秒でマスターにバレてしまった。
しかも最前列で踊れというご要望付きで。
仕方が無いので「はい」としおらしく返事をし、前の位置へと移動をした。それを確認するとヨンジュン先生は曲をスタートさせた。
GグループはKグループに負けじと、エネルギッシュなダンスを披露した。私も皆の熱量に遅れを取らないように、体を大きく動かす意識しながら踊り切ることができた。
いつもよりも体力を使った気がして、1回通しで踊っただけなのに疲労を感じている。あと2回くらい踊ったらもう動けなくなりそうだ。
既に苦しい息を吐き始めた私を横目に、先生は次の練習方法を告げた。
「次は個人チェックだ、まずはマシューとA」
先生私が今既に死にそうなの見えていただろうに、休む隙も与えないなんて鬼すぎる。それでも反抗なんてできないので、大人しく前に出てきたマシューの隣に並び、再び鳴り始めた音楽に合わせて体を動かした。
「マシューはいい感じだ、ミスには気を付けるように。Aはもっとステップ一つ一つ強く踏み込んで踊るんだ。分かったか?」
「はい、ありがとうございます。」息を整えるのに必死で話半分に改善点を聞き、そそくさと後列に戻ろうと体を反転させた時、次の個人チェックが行われるメンバーが呼ばれた。
「次はワンズーハオとA!」
「えっ嘘でしょ?」
思わず本音が口から滑り落ちると、壁際の方から噴き出すような声が聞こえた。ちらりと見やるとKグループのゴヌクという子が面白そうに口元がにやついているのが分かる。人の不幸を笑うなどなんて奴だ。
「ほらA、頑張ろう」
ズーハオは私の肩を軽く叩き励ましの言葉を投げかけてくれたが、視線が憐れみに満ちていてなんだか疲労感が更に増してしまった。
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作者名:すいみ | 作成日時:2023年3月12日 3時