Please (not) Pick Me (ページ14)

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シグナルソング練習6 ページ14

そんな思考に耽りながら彼をぼんやり眺めていたら、偶々彼が視線を上げた際にうっかり視線がかち合ってしまった。

彼に見入っていたことがバレてしまい、焦り故に顔を背けることも忘れて間抜け面のまま固まってしまった。
彼はというと少し目を見開いて硬直した私を注視したが、すぐさま表情を切り替えて先ほどと同じ清爽な笑顔を作り、小さく手を振った。

私も恐る恐る右手を胸の辺りまで上げて、振り返す。すると彼は満足気な顔をして、再び周囲とのお喋りに興じた。

一瞬の出来事だったが、私の仄暗い感情が伝わってしまったのではないかと、急に恥ずかしくなってしまった。
彼が私の思考を読み取るなんてそんなわけが無いのに後ろめたい感情の波が私を襲って、マスターらによって練習が開始されるまで、私はひたすら床のタイルに刻まれた傷の数を数えていた。

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歌唱練習は、特筆するような問題もなく終えられた。
先生に当てられたタクトは出来はともかく懸命に歌う姿が微笑ましかったし、Gグループの数少ないオールスターであるジャンハオという練習生は、サビ前のパートの高音を軽やかに披露してみせた。

私にとっての問題はダンス練習だった。

初めにマスターがサビの振り付けを私たちに見せて、その後5分間の練習時間に入った。
比較的振りを覚えるのが早い私は、近くの練習生と助け合い覚えたものを身体に叩き込んだ。良い意味でも悪い意味でも、注目されない程度に無難に踊れれば私は良かったのだ。

5分間の練習時間の後、まず3スターが指名を受け全員でサビのパートを踊る。

自分は振りやタイミングを間違えた箇所は無かったため、他の子が名指しで評価を受けるところを他人事のように見つめていた。マシューが先生からお褒めの言葉を貰った時は、自分の事ではないのに得意気な気持ちになってしまったが。
率直な賞賛に照れを隠せないマシューを微笑ましく思っていた時だった。
　

「A、サビの始めのパートもう一度踊ってみて」

ヨンジュン先生に唐突に名指しされ、心臓が小さく飛び跳ねた。部屋中の視線が私に注目しているのを感じ、非常に居心地が悪い。
驚かさないでください、なんて言えずに従順に返事をして、ご希望のパートを歌詞も口ずさみながら披露した。

「Aは力強さが全く無いね、明日からの練習覚悟するように」

この合宿を無難にやり過ごしたいという希望は、早々に打ち砕かれてしまったようだ。