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店の中に入ると、すぐに板前のいるカウンター席が現れ、それ程広くない店内を更に奥まで進んだ。
そして、カウンターの奥にひっそりと現れた個室に通される。
壁に空けられた入り口の高さは子供の身長程しかなく、まるで茶室のにじり口を思わせた。
『すごい───』
更に個室の中も、外観通りの高級感が漂っていた。
なんの心構えも無しに来てしまったからだろうか、目まぐるしい展開に緊張を隠せずにいる。
それから私は、ぎこちない所作で座敷に正座すると、これでもかと背筋をピンと伸ばした。
すると、その様子をテーブルの向かいで見ていた彼が噴き出す。
「───プッ･･･そんな気ぃ張らんでも大丈夫やで？足崩しぃ？」
『いや、でも、少しでも気を抜いたら庶民だってバレそうです』
「どういう心配やねん」
そう言って彼は苦笑を滲ませていたが、私にとっては一大事なのだ。
ファミレス感覚で、こんな敷居の高そうな店に入れる勇気も無ければ、そもそもの感覚がない。
だが、一方の彼はこの雰囲気にも慣れているような様子で、お酒のメニューに目を通していた。
今や、こうして彼とは夫婦関係となり一番近い存在になった訳だが、こういう部分を垣間見ると、やはり芸能人なのだと、急に距離を感じてしまう。
「───せっかく懐石料理食べに来たんやし、今日は日本酒にする？」
『うん、そうですね』
優しく微笑みかけてくれる彼に、私は感情の薄い笑みを返してしまった。
＊＊＊
『───ふぅ〜･･･美味しかった。ごちそうさまです』
「どういたしまして。僕からのホワイトデーはどうでした？」
『ふふ、最高でした。こんなに素敵なホワイトデーは初めてです』
「そら良かったわ」
店を出た私達は、ゆっくりとした足取りで、先程までの優雅な時間の余韻に浸っていた。
料理は全てコースで、前菜からデザートまで、季節の旬な食材が見た目にも華やかな姿に変わり、次々と運ばれてきた。
その豪華さに、ただでさえ溜息が漏れてしまうというのに、日本酒が徳利ではなく竹筒に注がれて出てきた時には、いよいよ卒倒するかと思った。
仕事に追われ、毎日おにぎりを片手にパソコンを打っていたあの頃が、今じゃ他人の記憶のように感じられる。
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めめこ(プロフ) - 楓さん» そう言って頂けると嬉しいです！読んで頂きありがとうございました！ (2022年11月26日 19時) (
レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
楓(プロフ) - めめこさんのまるちゃんが大好きです！お誕生日おめでとうございました^ ^ (2022年11月26日 10時) (レス) @page35 id: 2ce83629e3 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - まいさん» 楽しんでもらえたなら良かったです！また読んで頂きありがとうございます！ (2021年3月15日 18時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
まい(プロフ) - バレンタインから1ヶ月楽しみに待ってました！ホワイトデーも｢キュン｣をありがとうございます。 (2021年3月15日 3時) (レス) id: 289a5ec9d0 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - みーこさん» ありがとうございます！これから少しずつお話増やしますので、また読みにきてください！ (2021年3月14日 20時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2021年3月14日 15時
