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「もう、敵わへんな───俺の奥さんには」
コツン、と互いの額が合わせられる。
『私達のクリスマスは、もう少し後にやりましょう。それに実を言うと、まだプレゼント買ってなくて・・・・・・その分、猶予ができて良かったです!』
「フフ、せやね。プレゼント期待しとくわ」
至近距離で見つめ合うと、どちらからともなく微笑み合う。
「よし!じゃあ、お待ちかねのアイスタイムにしますか」
心の引っ掛かりが取れたのか、目の前の笑顔は先程よりもずっとスッキリしていた。
それから、アイスを持ってソファへ移動すれば、「あ〜ん」と口を開けた彼が待っていた。
随分と大きな雛鳥だと苦笑しつつ、私は彼の前にアイスを差し出す。
そしてそれを一口噛じると、その冷たさに眉間に皺を寄せていた。
「ん〜、うんま!アイス食べたん久しぶりやわ」
彼の反応を見届けてから、ようやく私もアイスにありつく。
『至福・・・』
滑らかで濃厚なバニラの味が、口の中でゆっくりと溶けていく。
鼻から抜けていく甘い香りに、一気に幸福感が高まった。
しかし、一口、また一口と噛じっていくうちに、棒アイスを選んだ事を少し後悔した。
段々と溶けてきたアイスが、持ち手を伝って私の手に垂れてくるのである。
挙句、彼が片側ばかり食べ進めるせいで、アイスが今にも棒から落ちてしまいそうだった。
『隆平さん、片側ばっかり食べないでください』
「それより、はよ食べな溶けて落ちるで」
誰のせいで落ちそうになっているんだ。
彼の意地悪な笑みに、わざとこんな変な食べ方をしたのだろうと、遅れながら気が付いた。
そして、慌てて最後の一口を頬張った所で、にんまりと口元に弧を描いた彼と目があった。
どこか熱っぽい視線に絡め取られ、筋張った彼の手が、サラリと私の髪をすいてく。
どうしてか視線を逸らせなくて、ゆっくりと近づいた彼の唇に、そのままあっさりと塞がれてしまった。
いつの間にか後頭部に手を回され、口元に残るバニラの香りを追うように、何度も口付けられる。
逃げ場のないキスの快感に、私の意識は段々と朦朧としていった。
そして、最後にリップ音を残して、ゆっくりと互いの唇が離れていくと、思わず吐息が漏れる。
「フフ、かわええな・・・」
それを彼がクスクスと笑い、また顔を寄せてくるものだから、私は慌ててその口元を手で押し返した。
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めめこ(プロフ) - 楓さん» そう言って頂けると嬉しいです!読んで頂きありがとうございました! (2022年11月26日 19時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
楓(プロフ) - めめこさんのまるちゃんが大好きです!お誕生日おめでとうございました^ ^ (2022年11月26日 10時) (レス) @page35 id: 2ce83629e3 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - まいさん» 楽しんでもらえたなら良かったです!また読んで頂きありがとうございます! (2021年3月15日 18時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
まい(プロフ) - バレンタインから1ヶ月楽しみに待ってました!ホワイトデーも「キュン」をありがとうございます。 (2021年3月15日 3時) (レス) id: 289a5ec9d0 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - みーこさん» ありがとうございます!これから少しずつお話増やしますので、また読みにきてください! (2021年3月14日 20時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めめこ | 作成日時:2021年3月14日 15時