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｢･･･えーと、これは？｣
『この間の隅田川のやつです。録画しておきました』
そう言いながら、私はテーブルの奥へタブレットを立て掛け、再び食事に戻る。
｢んー、なるほど。これは確かに花火大会やな｣
彼はだいぶ寛大な心でこの状況を肯定してくれているが、そのセリフはかなりの棒読みだった。
そして静かに箸を置くと、急に黙りこんでしまった。
『───どうしました？』
お腹でも冷やしたかと心配になってその顔を覗くと、寂しそうに笑う彼がこちらを向いた。
｢花火大会、行きたい？｣
『え？』
｢ん〜、ごめん。今の聞き方はちょっとイジワルやんな。そら、行きたいのは当然やろうし･･･｣
『隆平さん？』
彼が辛そうに笑うから、私は思わずその手に自分の手を重ねていた。
すると、彼が私の手をそっと握り返す。
｢なんか俺、Aちゃんがやりたい事、全然叶えてあげられてへんなって。夏はツアーが入ってるから、週末はいつも一緒に居てあげられへんし、かと言って花火大会とかお祭りとか、人がいっぱいおるとこにも連れていってあげられへんし･･････ごめんな？｣
この人は、いつもいつも優し過ぎる───。
『───別に、花火が観たいだけなら一人でだって勝手に行きます』
｢･････････せやね｣
拗ねたように彼の口が尖る。
その横顔に、私はクスリと笑って言葉を続けた。
『でも、そこに隆平さんが居ないなら、私には行く意味が無いんです』
｢Aちゃん･･･｣
『私にとって一番大事なのは、隣で隆平さんが笑ってくれてる事だから』
一人で観る花火なんていらない。
一人で行くお祭りも、一人で飲むお酒もご飯も───。
『隆平さんと一緒にいる場所が、時間が、私には特別なんです───だから、花火なんて録画で十分です』
しかし、そう言って微笑んでみたものの、彼からの反応が無い事に私は不安になる。
･･････少し、気持ちが重かっただろうか。
すると、繋がれていた手が強く握られた。
そして、彼の温かい手が私の頬に触れると、すぐに唇を塞がれる。
それから互いの唇が離れると、コツンと額が合わされ、彼がクスリと笑ったのが伝わってくる。
視線をあげれば、優しい眼差しが私だけに注がれていた。
｢ありがとうAちゃん。俺も、Aちゃんがそばにおってくれたら、それ以上は何も望まへんよ｣
私の火照った頬を、涼しい風が撫でていった。
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めめこ(プロフ) - こおあさん» ありがとうございます。とっても嬉しいです！頑張って更新したいと思います！ (2021年12月4日 22時) (
レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
こおあ(プロフ) - いつも素敵に拝見しています！私もこんな甘いリアルな橙さんが書けるようになりたいなあと思ってます！これからも応援してます！ (2021年12月4日 17時) (レス) id: 27440602aa (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - まいさん» 読んで頂きありがとうございます！コメントを励みに頑張ります！ (2021年3月12日 18時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
まい(プロフ) - バレンタイン最高でした！ホワイトデー楽しみにしてます!! (2021年3月11日 11時) (レス) id: 289a5ec9d0 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - ゆんゆさん» ありがとうございます！そう言って頂けてとても嬉しいですm(_ _)m いつかヒロインの誕生日話も書けたらいいなと思っています！ (2019年11月27日 20時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2019年7月2日 23時
