◆8(丸山side) ページ8
俺は彼女の前まで歩いていくと、優しくその名前を呼んだ。
｢Aちゃん？｣
『え･･･？』
すると、狐につままれたような表情で、彼女が顔を上げた。
『丸山さん･･･！？ え、え？何でここに！？』
そのあたふたした様子が可笑しくて、ついつい笑ってしまう。
｢いや、さっき車からたまたま見つけてん。それで、つい追いかけてきてもうたわ｣
『車から･･････もしかして丸山さんって私のスト───』
｢ストーカーちゃうからね？｣
『ふふ、わかってますよ。でも、本当によく見つけられますね。もはや脱帽です』
眉尻を下げて笑う彼女に、俺は愛おしい眼差しを落とす。
君が好きだから、その姿を見つける事なんて造作もないんだ。
そう言ったら、君はきっと困った顔をするだろうから、この言葉はそっと心の内にしまっておく。
そして俺は何も言わずに微笑み返すと、その場にしゃがんで彼女の顔を見上げた。
｢足どうしたん？さっきびっこ引いて歩いてたやろ？｣
『そんなとこまで見てるんですか･･････』
｢たまたまやって。で？ケガでもしたん？｣
靴を脱いだ左足に視線を向けると、彼女は隠すように自分の踵を押さえる。
『見ない方がいいですよ？』
｢なんで？｣
『なんでって･･････見て気持ちの良いものじゃないし───あっ』
彼女にしては珍しく歯切れ悪く答えるもんだから、俺は言葉を遮ってその足を取った。
そして踵を見ると、皮が向けて血が滲んでいる。
確かに、これは痛そうだ･･･。
｢靴擦れしてもうたん？｣
すぐ脇に脱がれた靴を見れば、いつもより高めのヒールを履いている印象を受けた。
『今日おろしたばっかりだったんですけど、まだ馴染んでなくて･･･』
すみません、と謝る彼女に俺は苦笑を滲ませる。
こんな些細な事にも、彼女の強がりな性格が出ていると思った。
一言くらい｢痛い｣と言って、人に甘えたらいいのに。
でも彼女は、平気そうな顔をしてコンビニの袋を漁ると、絆創膏を取り出した。
『でも、さっきこれ買ったんで大丈夫です』
そう言って俺から足を引くと、箱から絆創膏を一枚出して、踵に貼り始めた。
｢･･････あれ？もう･･･！あ･･･｣
ところが、絆創膏は彼女の手の中で見る見るとグシャグシャになっていく。
仕方なくもう一枚新しいのを出すが、それも同様に丸まっていくから、俺はポカンと口を開け彼女を見上げた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 353人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まるまゆ(プロフ) - 面白すぎます！リアルすぎて見入ってしまってます！ (2019年6月27日 4時) (
レス) id: cd50c0de6b (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - colorfulcrayon2さん» 残念ですが終わります！(笑) ここまで読んでいただいてありがとうございますm(_ _)m 短編等も考えてますので、引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです！ (2019年6月19日 20時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
colorfulcrayon2(プロフ) - めめこさん！終わってほしくないよーーーー！！！笑 (2019年6月19日 19時) (レス) id: bd237a513f (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - きゃらめるさん» 感想ありがとうございます！リアルな丸山さんを書けているようで安心しました(笑) これからも作品を楽しんでいただければ幸いです！ (2019年6月13日 13時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - ゆんゆさん» いつも読んでいただきありがとうございます！こちらこそ素敵な感想をもらえて嬉しいです！！これからもこちらの作品を宜しくお願いしますm(_ _)m (2019年6月13日 13時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：めめこ | 作成日時：2019年6月6日 21時
