◆36(丸山side) ページ36
そこには、大きめの封書をいくつか抱えた彼女の姿があった。
肩からはいつもの鞄を掛けていて、外出先から戻ってきた所のようである。
そして受付の子が、おたおたと彼女へ説明をするのが見えて、俺はソファから静かに立ち上がった。
｢Aちゃん･･･｣
名前を呼ぶと、彼女がこちらを振り向いた。
たったそれだけの事でも嬉しくて、俺の表情に自然と笑みが浮かぶ。
けれど、こちらを向いた彼女の表情は、ひどく険しかった。
そしてコツコツとヒールを鳴らしながらこちらまで来ると、彼女からは聞いた事もないような冷たい声が、俺の耳に届いた。
『───なんのご用ですか？』
｢なんのって･･････｣
まさかこんな態度を取られるとは思ってもみなくて、俺は二の句が継げなかった。
聞きたい事や言いたい事は沢山あったはずなのに、すっかり畏縮して黙り込んでしまう。
すると彼女は小さく息を吐いて、『ちょっと来てください』と言うと歩きだした。
それに置いていかれぬよう、俺も慌てて彼女の背中を追う。
連れてこられたのは、エレベーター裏の人気のない通路だった。
『いきなり何ですか？丸山さん、あと30分後には打ち合わせですよね？』
｢うん。そうやねんけど、どうしてもAちゃんと話したくて。電話も出えへんから、直接来た｣
そう答えると、彼女は思い切り眉間にしわを寄せて頭を抱えた。
｢───なんで、嘘ついたん？｣
『え？』
｢この間の電話で、あの雨の日の事話したやろ？｣
面倒な雑談なんて全て取っ払い、いきなり本題を出すと、僅かに彼女の顔付きが変わった。
｢あの日ウチには来なかったって言うてたけど、あれ、嘘やんね？｣
『なんで嘘なんて･･･』
すぐに伏せた目から、彼女の動揺が伺える。
しかし俺は真っ直ぐと彼女の目を見据えると、更に言葉を続けた。
｢───背中に、痕が残ってた。Aちゃんが付けた爪の痕｣
俺の言葉に、弾かれたように彼女は顔を上げた。
大きく目を見開き、そしてすぐに苦痛に歪んだ表情を浮かべる。
｢Aちゃん｣
いつもの強がりで、泣くのをこらえているような彼女の表情に、俺の胸がたまらなく締め付けられる。
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まるまゆ(プロフ) - 面白すぎます！リアルすぎて見入ってしまってます！ (2019年6月27日 4時) (
レス) id: cd50c0de6b (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - colorfulcrayon2さん» 残念ですが終わります！(笑) ここまで読んでいただいてありがとうございますm(_ _)m 短編等も考えてますので、引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです！ (2019年6月19日 20時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
colorfulcrayon2(プロフ) - めめこさん！終わってほしくないよーーーー！！！笑 (2019年6月19日 19時) (レス) id: bd237a513f (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - きゃらめるさん» 感想ありがとうございます！リアルな丸山さんを書けているようで安心しました(笑) これからも作品を楽しんでいただければ幸いです！ (2019年6月13日 13時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - ゆんゆさん» いつも読んでいただきありがとうございます！こちらこそ素敵な感想をもらえて嬉しいです！！これからもこちらの作品を宜しくお願いしますm(_ _)m (2019年6月13日 13時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2019年6月6日 21時
