◆28(丸山side) ページ28
＊＊＊
───雨粒が窓を叩く音がした。
そして、またあの子が泣いているような気がして、抱き締めようと手を伸ばす。
けれど、その手はシーツの上を彷徨うばかりで、彼女の体はどこにもなかった。
ゆっくりと瞼を持ち上げると、見慣れた自分の部屋が目に入る。
｢･･････Aちゃん？｣
だが、そこに彼女の姿はなかった。
アカン、完全に寝てもうた。
あの子がどこにも行かないよう、目は閉じても神経は研ぎ澄ませていたのに、いつの間にか寝てしまっていたようだ。
俺はベッドから飛び起きると、寝起きでふらつく足のままリビングへ走った。
ソファには掛け布団が敷かれ、電気も点けたままのそこは、昨夜の状態から何も変わらない。
ただ一つ、彼女が居ない事を除いては───。
｢どこいったん･･･｣
エアコンの前に掛けていたはずの彼女の洋服もなくなっている。
ソファ脇に置いていた彼女のバッグも。
そしてキッチンに入り流しを覗けば、そこには自分が使っていたカップだけが1つ残されていた。
確かに、昨晩はここに2つ置いていたはずなのに───。
それから俺は風呂場やトイレの中まで見たが、彼女の姿はおろか、彼女が居たという痕跡まで見つけられなかった。
髪の毛の一本すら落ちていない。
それこそ、全てが夢だったのではと錯覚してしまう程に───。
でも、俺の中にはまだ確実に彼女の存在が残っている。
俺はテーブルの上に置いたままにしていたスマホを取ると、彼女のケータイへ電話を掛けた。
しかし、いくら着信を鳴らしても、彼女が電話に出る事はなかった。
俺は深い溜め息をついて、ソファに身を沈める。
すると、手の中のスマホが鳴り出した。
慌てて画面を見ると、そこには"AA"の表示がある。
俺は興奮に震える指先で、通話ボタンを押した。
｢もしもし？｣
(───Aです。すみません、電車の中だったので出られませんでした)
｢あ、うん、それはええんやけど･･･｣
(どうされました？こんな朝早くに)
｢いや、起きたらAちゃんおらんからさ。帰るんなら声掛けてくれてもよかったんに。心配するやんか｣
電話口の彼女は、いつも以上に業務的な声色と態度だった。
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まるまゆ(プロフ) - 面白すぎます！リアルすぎて見入ってしまってます！ (2019年6月27日 4時) (
レス) id: cd50c0de6b (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - colorfulcrayon2さん» 残念ですが終わります！(笑) ここまで読んでいただいてありがとうございますm(_ _)m 短編等も考えてますので、引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです！ (2019年6月19日 20時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
colorfulcrayon2(プロフ) - めめこさん！終わってほしくないよーーーー！！！笑 (2019年6月19日 19時) (レス) id: bd237a513f (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - きゃらめるさん» 感想ありがとうございます！リアルな丸山さんを書けているようで安心しました(笑) これからも作品を楽しんでいただければ幸いです！ (2019年6月13日 13時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - ゆんゆさん» いつも読んでいただきありがとうございます！こちらこそ素敵な感想をもらえて嬉しいです！！これからもこちらの作品を宜しくお願いしますm(_ _)m (2019年6月13日 13時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2019年6月6日 21時
