◇34(丸山side) ページ34
『ん〜･･･、これ！』
彼女が手に取ったのは、きな粉がまぶされた焼きドーナツだった。
そして嬉しそうに笑みを浮かべて、さっそく袋を開けると一口かぶりつく。
そんな何気ない仕草のひとつでさえも、可愛くて仕方がない。
両の手でドーナツを持つ姿は、なんだか小動物を思わせた。
そして、彼女の右手の甲を見つめて思い出すのは、去年のあの日の事だ。
前回のツアーのリハーサルがあった日、俺は彼女の手にコーヒーを溢してしまったのだ。
こうして見る限り、痕にはならなかったようだが、それでもいまだにこうして罪悪感が蘇ってくる。
｢ごめんな？｣
俺はそっと彼女の右手を取った。
『丸山さん？』
｢去年、Aちゃんにコーヒーかけた時の事思い出した･･･｣
『その言い方は語弊がありますよ。あれは事故みたいなもんですし、それに強引に手を出した私も悪かったんです』
まだ気にしてるんですか？と、彼女が苦笑する。
それに対し、俺も苦笑しながら頷いた。
好きな子に怪我を負わせておいて、気にしないはずがない。
『丸山さんに怪我がなくて何よりでした。でも、あの時は本当に焦ったんですからね？衣装が汚れたらどうしようって、気が気じゃなかったです』
｢･･････え？衣装？｣
『はい。それなのに、コーヒーまみれの私に近寄ってくるから、あの時はつい言葉キツく言っちゃいました。すみません』
"触んないでください！"
あれは、そういう意味だったのか･･････。
彼女の説明を聞いて、拍子抜けしてしまった。
そして同時に、心が解放されたように軽くなる。
良かった。嫌われた訳じゃなかったんだ。
｢───もう、あの時めっちゃ傷付いたわ｣
『すみません･･･』
気まずそうに謝る彼女に、俺は静かに首を横に振る。
そして、そのまま口を開いた。
｢Aちゃんから、その話聞けて良かった。ありがとお｣
『そう、ですか？』
不思議そうにする彼女に、俺はニコリと微笑み返す。
それから、彼女の唇の片端に触れて、親指の腹でそっと撫でた。
｢きな粉付いてる｣
『え･･･！？』
本当はそんなの嘘だった。
でも、恥ずかしそうにしながら口元をはたく姿が面白くて、可愛くて、もう少しだけイジワルしたくなる。
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めめこ(プロフ) - りなさん» ありがとうございます！楽しく読んでいただけて嬉しいです。続編作成中ですので少しお待ちください！ (2019年6月6日 12時) (
レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
りな - 本当におもしろいです！早く続き見たいです！ (2019年6月5日 23時) (レス) id: 9dc5982e37 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - ゆんゆさん» いつも読んでいただきありがとうございます！ヤキモチを通り越すくらいゆんゆさんにドキドキしてもらえるような作品にしたいと思います(笑)これからもよろしくお願いします！ (2019年5月26日 21時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんゆ(プロフ) - いつも更新を楽しみにしています。まるたーの私なので、上手くいって欲しいと思う反面、感情がリアルに伝わるってくるので、上手くいったらヤキモチ妬きそうで今から心構えを、なんて思ってしまいます(笑)これからも楽しみにしています！ (2019年5月26日 19時) (レス) id: e91edee03b (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - colorfulcrayon2さん» ご感想ありがとうございます！プロだなんて嬉しすぎます(><)更新頑張ります！！ (2019年5月23日 7時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2019年5月3日 15時
