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臨時支給と言われても、いまだよく状況が飲み込めず、私は目の前の花と店長の顔を、何度も往復して見てしまった。
「なんや、気に入らんかったんか？」
『いや！そうじゃ、なくて･･･』
ビックリしてしまったんだ。
男の人から、お花を貰うのは初めてだったから───。
『ありがとうございます』
嬉しかった。
私はお礼と共にアネモネの花を受け取ると、気恥ずかしいながらも店長の顔を見上げた。
すると店長は、ニコリと目を細めて、私の頭にポンと優しく手を置く。
「おう、素直に受け取っとくんが一番やで。今日はよぉ頑張ったからな。お疲れさん」
店長の手のひらはとても温かくて、けど少しガサついてて、どこか懐かしい感じがした。
そして、すぐに離れていった温もりに、若干の名残惜しさを感じてしまう自分がいて、戸惑ってしまった。
まだ出会ったばかりの相手に対して、いったい自分は何を考えているんだろうか。
『あの、店長』
言葉にできない己の複雑な心情を追い払うように、私は努めて明るい声を出した。
「なに？」
『答え合わせしても、いいですか？』
「え･･･」
『大倉君を雇った理由って･･･』
「･･････ああ。客寄せパンダや」
店長はあっけらかんとした表情で躊躇なく答えた。
『すごいハッキリ言いますね』
「だって、ホンマの事やし。すぐサボるけど顔面はピカイチやからな」
褒めているのか、貶しているのか。
しかし、それでも嫌味に聞こえないのが、この人の凄い所だと思う。
こちらもつい笑ってしまった程だ。
「ほら、はよ帰りや。こっちも仕事進まんわ」
『おっと、すいません』
つい話し込んでしまった。
それから店長は再びケースの前へ戻ると、黙々と作業を続けていく。
私はその背中に『お先に失礼します』と言葉を掛けたが、店長は「おぅ」とぶっきらぼうな返事をするだけで、こちらを振り返る事はなかった。
『じゃあ、お疲れ様でした』
店長の背中に一礼をして、私はバックヤードへ戻る。
上着に袖を通し、バッグを肩に掛けて裏口の扉を開けると、夜のひんやりとした空気がこの身を包んだ。
手元のアネモネに視線を落とせば、胸の辺りがまたこそばゆくなっていく。
『綺麗･･･』
そういえば、初めてこのお店を覗いた時も、店長はアネモネを持ってたな───。
アネモネ(紫)･･････あなたを信じて待つ
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めめこ(プロフ) - ゆきさん» 励みになるコメントありがとうございます！✨ 更新頑張りますので、これからもお話を楽しんでください😊 (4月9日 18時) (
レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - めめこさんの書くお話が、占ツクに投稿されているお話の中で一番好きです。更新楽しみに待っています。 (4月4日 19時) (レス) @page42 id: 159543e1b4 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - アッキーナさん» 読んで頂きありがとうございます！嬉しいお言葉です✨ (2月8日 7時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
アッキーナ(プロフ) - 素敵なお話すぎて一気に読んでしまいました！この先の展開楽しみにしてます。 (1月31日 16時) (レス) id: ee5b45e1af (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - 海嵐さん» ありがとうございます！今後の展開も楽しみに読んで頂けたら嬉しいです！ (1月6日 18時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2023年12月29日 19時
