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『───やっと閉店だ〜･･･』
店のガラス扉を締め"Closed"の札を提げるのと同時に、深い溜息が漏れた。
長蛇の列が出来るという訳ではないが、あれから大倉君を目当てにやってきたと思しきお客さん達で、フロアは引っ切り無しに稼働していた。
「Aさんお疲れ〜」
『大倉君もお疲れ様･･･』
「ハハ、なんかちょっとやつれたんちゃう？」
『そうですね･･･』
なんなら重力で、身長も少し縮んだんじゃなかろうか。
前職はデスクワーク中心だったから、丸一日の立ち仕事に膝が悲鳴を上げそうだ。
「じゃあ、俺は先に上がるんで。バイバイAさん」
『うん、お疲れ様でした』
大倉君はさっさと上着を羽織ってリュックを背負うと、風の様な速さで裏口に向かっていく。
多分、店長に捕まりたくないのだろう。
「村上君またな〜！」
そして彼は、大声を上げて店内で作業をしている店長に声をかけると、そのまま扉の向こうへ消えていった。
「───店長って呼べ言うてるやろ！気ぃ付けて帰るんやぞー」
厳しいんだか、優しいんだか。
もう行ってしまった大倉君に向かって、店長のよく通る声が木霊していた。
ほんと、最後までコントを見ているようだ。
こっそりクスクスと笑って、私は片付けをしている店長の背中に声を掛けた。
『店長、何を手伝えばいいですか？』
「ん？ああー」
店長はこちらを振り返ると、数秒考える素振りを見せ、すぐに首を横に振った。
「今日はもうええから、そのままあがりや」
『え？でも、閉店後の作業とか』
「1日目からそんな張り切って詰め込んでも、体力も頭もしんどいだけやろ。今日は帰って休みや」
そう言って私を見る目は、驚くほど優しかった。
『は、はい･･･』
不意を突かれたせいだろうか、変な緊張感に胸の辺りがむず痒くなる。
「───あ、そうや。ちょっとこっち来てみぃ？」
『？』
すると、店長は思い出したように手を叩いて、私を作業台の前へ呼んだ。
もしや、帰る前に今日のダメ出しでもされるんだろうか？
私は不安と緊張を抱えながら、店長の背中をジッと見つめる。
しかし、その手元では何やらガサゴソとやっていて、最後にはラッピング用のリボンへ手を伸ばしていた。
「ほい、今日の臨時支給な？」
『え･･･お花？』
店長の言葉と共に目の前に差し出されたのは、一輪の紫のアネモネだった。
透明のフィルムと淡い紫色のリボンで綺麗にラッピングされている。
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めめこ(プロフ) - ゆきさん» 励みになるコメントありがとうございます！✨ 更新頑張りますので、これからもお話を楽しんでください😊 (4月9日 18時) (
レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - めめこさんの書くお話が、占ツクに投稿されているお話の中で一番好きです。更新楽しみに待っています。 (4月4日 19時) (レス) @page42 id: 159543e1b4 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - アッキーナさん» 読んで頂きありがとうございます！嬉しいお言葉です✨ (2月8日 7時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
アッキーナ(プロフ) - 素敵なお話すぎて一気に読んでしまいました！この先の展開楽しみにしてます。 (1月31日 16時) (レス) id: ee5b45e1af (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - 海嵐さん» ありがとうございます！今後の展開も楽しみに読んで頂けたら嬉しいです！ (1月6日 18時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2023年12月29日 19時
