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チリン───。
『っ！』
しまった。ドアを閉め忘れていた。
店内に響いたドア鈴の音に、私は弾かれたように顔を上げる。
『すみません、今日はもう閉店して───』
誤って入ってきてしまった客に断りを入れようと、そちらを振り返ったところで、私は言葉を止めた。
『店長･･･？』
そこに立っていたのは、つい先程ここを出発したばかりの店長だったからだ。
かろうじてお客様じゃなくて良かった。面倒な人だったら、下手したらクレームになっていたかもしれない。
「アホ、先にドアの施錠せなアカンやろ」
『すみません、気を付けます。ところで、店長はどうしたんですか？あ、忘れ物とか？』
店長のごもっともな指摘に謝罪しつつ、私は急いで入口のロールカーテンを下げた。
そして、明らかに覇気のない店長の様子に気付く。
たかがこの数十分の間に何があったのだろうか？
店を出たときはいつもと変わりなかったのに。
今、目の前に立つ店長は、視線を伏せてどこか弱々しい印象を受けた。
お酒がまわっているのか、顔も少し赤らんでいる気がする。
『店長？大丈夫ですか？お友達は？あ、お水でも持ってきますか？店長･･･？』
しかし、店長からはなんの反応も返って来ず、さすがに私も戸惑い始めた。
『店長？もしかして体調悪いですか？少し裏で休みます？』
「うっさいわ･･･」
『店、長･･･？わっ･･････！』
ボソリと低い声が返ってきたかと思った瞬間、店長に手首を掴まれるとそのまま強く引き寄せられ、気付けば抱きしめられていた。
私の肩口に顔を埋め、少し硬い彼の髪が首元をかすめてくすぐったい。
驚きと困惑で私は何もできないまま、ただ彼の腕の中に収まっていた。
『店長･･･？』
「ちゃうわ･･･」
『え？』
「店長ちゃうわ･･･アホ･･･」
蚊の鳴くような小さく掠れた弱々しい声。
そして、わずかに震えだした呼吸と肩に、泣いているのだと気付く。
けれど、事情も分からないままなんと声をかけたら良いのかも分からず、私はぎこちなくその背中を撫でるしかできなかった。
それに、あの店長がこんなふうに弱々しく涙を見せた事にも、驚きが隠せなかった。
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めめこ(プロフ) - ゆきさん» 励みになるコメントありがとうございます！✨ 更新頑張りますので、これからもお話を楽しんでください😊 (4月9日 18時) (
レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - めめこさんの書くお話が、占ツクに投稿されているお話の中で一番好きです。更新楽しみに待っています。 (4月4日 19時) (レス) @page42 id: 159543e1b4 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - アッキーナさん» 読んで頂きありがとうございます！嬉しいお言葉です✨ (2月8日 7時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
アッキーナ(プロフ) - 素敵なお話すぎて一気に読んでしまいました！この先の展開楽しみにしてます。 (1月31日 16時) (レス) id: ee5b45e1af (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - 海嵐さん» ありがとうございます！今後の展開も楽しみに読んで頂けたら嬉しいです！ (1月6日 18時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2023年12月29日 19時
