7 ページ39
「そんなしょーもない事ちゃうわ！」
ちなみに、やったのはスロットで、二千円の勝ち越しだ。
「一回落ち着けってヨコ。そんな喧嘩腰に話したってしゃーないやろ。深呼吸しい？」
向いのすばるにパシッと肩を叩かれ、宥められる。
確かにそれもそうか、と俺は一度背筋を正すと、1つ盛大な深呼吸をした。
その間に、ヒナの目の前に注文したビールのジョッキが置かれる。
そして、ヒナが一口飲むのを見届けてから、俺は口を開いた。
「ヒナ、単刀直入に聞くけど、なんであの店に"あの子"がおるん？」
「なんでって、店員として採用したからやろ」
「はぁ？履歴書持ってか？面接に？」
「そうや」
「いやもう、意味分からん！どのツラ下げて･･･！」
「普通のツラや」
ヒナの受け答えが、いちいち揚げ足を取っているようで苛立ちが増す。
俺は「んぁあ〜･･･！」とやるせない雄叫びを上げて、頭をガサガサと掻きむしった。
すると、すばるが俺に手の平を向けて制すと、いつになく真剣な眼差しをヒナに向けた。
「なぁヒナ、そもそもあの子、お前が誰か分かってるんか？」
すばるのその問いかけに、ビールを煽ろうとしたヒナの手がピタリと止まる。
そして、そのまま口を付ける事なくジョッキをテーブルに戻すと、覇気のない声がその唇から漏れた。
「わかってへん」
その一言に、俺とすばるの表情が途端に苦いものへと変わる。
「いや、まあ･･･確かに違和感はあったけど･･･」
その先の言葉が見つからなかったのだろう。
すばるの口元が無音で少し動くが、結局きつく結んでこめかみを搔いていた。
どうして現実は、時に小説以上に残酷な事実を突きつけてくるのだろう。
ムカつく。
けれど、この怒りをぶつける先もなく、吐き出した溜め息は僅かに震えていた。
「･･････雇わんかったら良かったやん」
そして、口をついて出た言葉がこれだ。
きっと、これが包み隠さない本心だ。
そうしたら、コイツがこんなに苦しむ事はなかったはずだから。
そう思ったら、腹の底から湧き上がる黒い感情が、言葉へと形を変えて、止めどなく口からこぼれていった。
「なんでお前ばっかりがこんなに背負い込まなアカンねん？お前ばっかりが気ぃ使って、あの子はなんも知らんと安穏とあの店で働いてる。なんでや？俺はこんなん認められへん。俺はお前の友達やから、あの子よりお前の方が大事や」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 99人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
めめこ(プロフ) - ゆきさん» 励みになるコメントありがとうございます！✨ 更新頑張りますので、これからもお話を楽しんでください😊 (4月9日 18時) (
レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - めめこさんの書くお話が、占ツクに投稿されているお話の中で一番好きです。更新楽しみに待っています。 (4月4日 19時) (レス) @page42 id: 159543e1b4 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - アッキーナさん» 読んで頂きありがとうございます！嬉しいお言葉です✨ (2月8日 7時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
アッキーナ(プロフ) - 素敵なお話すぎて一気に読んでしまいました！この先の展開楽しみにしてます。 (1月31日 16時) (レス) id: ee5b45e1af (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - 海嵐さん» ありがとうございます！今後の展開も楽しみに読んで頂けたら嬉しいです！ (1月6日 18時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：めめこ | 作成日時：2023年12月29日 19時
