6 ページ38
事の発端は、今から数時間ほど前に遡る。
大学からの友人でもあり、職場の同期でもあったヒナの店に顔を出したのがきっかけだ。
あのガサツな性格に似合わず、花屋なんぞをやっていると言うから、心配で･･････いや、ほんの冷やかしのつもりで、同じく友人で同期のすばると様子を見に行った。
正直、ヒナが会社を辞めると言い出した時は、本気で止めたし軽い言い合いにもなった。
だってアイツは営業成績も若手の割には良かったし、上司や後輩からの信頼もあって、それを全て投げ売ってでも花屋をやる理由が、当時の俺には理解できなかったから。
けど、結果としてはヒナの想いを尊重する形となった。
俺やすばるが何を言おうと、もうヒナの気持ちは固まっているのだと分かったからだ。
だから、あの背中を見送ったはずなのに───。
なんで、こんな事になってんねん･･･！
先程よりも一段と早まる己の貧乏揺すりに、終いには振動がテーブルを伝って、卓上の皿やグラスが小刻みに震えだした。
そしてそれを見かねたすばるに、溜息混じりに注意を受ける。
「ちょ、その貧乏揺すりやめろや」
「･･････すまん。それより、アイツいつ来んねん。もう1時間以上待っとるぞ」
「さっき店出たって連絡来とったから、そろそろちゃう？」
すばるの言葉に俺は文句を飲み込んで、代わりに溜息を吐き出して頬杖を突く。
店があるからと一度は断ったヒナに、俺が無理を言って居酒屋に来るよう言ったのは分かっている。
そして、ここで散々問い詰められるであろう事も理解した上で、アイツは頷いてくれたのだ。
感情的になったらアカン。
「お、来た」
「っ！」
だが、いざ本人が目に入ると、どうしても感情が噴き上がってしまう。
思わず俺は、ダンッ！とテーブルに手をついて、勢いよろしく立ち上がってしまった。
その反動で、座っていた丸椅子が居酒屋の床に倒れ転がった。
そして、それを後ろの席のオッサンが、小さく舌打ちしながら元に戻してくれる。
「おおきに」
気持ちのない礼を後ろに掛けて、俺はどうにか腰を下ろすと、呑気にビールを注文しながら座るヒナを前のめりで睨み付ける。
「遅なってすまんな。んで、なんでヨコそんな機嫌悪いん？あ、あれか？待ってる間にパチンコでも行って金すったんか？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 99人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
めめこ(プロフ) - ゆきさん» 励みになるコメントありがとうございます！✨ 更新頑張りますので、これからもお話を楽しんでください😊 (4月9日 18時) (
レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - めめこさんの書くお話が、占ツクに投稿されているお話の中で一番好きです。更新楽しみに待っています。 (4月4日 19時) (レス) @page42 id: 159543e1b4 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - アッキーナさん» 読んで頂きありがとうございます！嬉しいお言葉です✨ (2月8日 7時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
アッキーナ(プロフ) - 素敵なお話すぎて一気に読んでしまいました！この先の展開楽しみにしてます。 (1月31日 16時) (レス) id: ee5b45e1af (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - 海嵐さん» ありがとうございます！今後の展開も楽しみに読んで頂けたら嬉しいです！ (1月6日 18時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：めめこ | 作成日時：2023年12月29日 19時
