月見草 ページ33
大倉side
暦上は秋である9月も、体感としてはまだ夏だ。
未だしぶとく生き残っている蝉の声を遠くに聞きながら、俺はバイト先の花屋でうだっていた。
「───たつ、売場でそんなダラッダラした態度すな！」
「ええやん、お客さんおらんし」
「店員がそんな態度で店番しとるから客が入らへんねや！」
「俺のせいにせんといてよ･･･」
挙げ句、この店のオーナー兼店長でもある村上君から、根拠のない言い掛かりをつけられる始末だ。
いつもなら、こんな時はAさんが庇ってくれるのだが、生憎本日は有給休暇で不在。
尚の事、俺のやる気は削げていた。
すると、無骨な男の手にガシッと肩を叩かれる。
もちろん、その相手は村上君だ。
「客引きと接客以外にも仕事はあるやろ。ほら、立て」
「俺の仕事をホストのキャッチみたいな感じで言わんといて」
「似たようなもんやろ」
「うわー」
何かに付けて、コンプライアンスがあーだこーだと言っているこのご時世で、よく彼のような人間が生きていられるものだ。
きっとその心臓には、超合金並みの剛毛がびっしりと生えているに違いない。
四六時中この村上君と一緒に居られるAさんは、もしや猛獣使いか何かか？
いや───単に村上君が懐いているだけって可能性も強いか。
正直、彼女への村上君の態度は、分かりやすい程に甘いし、優しい。
それは単に相手が女性だからでは？と意見を述べるやつが居るとしたら、それは大甘な考えだ。
だって村上君は、相手が女性だろうが厳しい態度は変えないから。
以前、女の子がバイトで入った事もあったが、村上上官の厳しい指導に絶えられず、たったの1週間で辞めていった事もあった。
まあ、だからと言ってAさんを叱らない訳ではないが、でも、全然違うのだ。
彼女を見つめる眼差しが───Aさんだけは特別だと言っている。
Aさんの方だって満更じゃなさそうだし、もういっそ付き合えばええのに、この人ら。
「てか、村上君さっきから何してんの？」
作業台の端に硝子のボトルやオイル、ドライフラワーを並べ、手元では何やら細かい作業をしている。
覗き込めば、紫蘭のプリザーブドフラワーを1輪ごとに切り分けているところだった。
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めめこ(プロフ) - ゆきさん» 励みになるコメントありがとうございます！✨ 更新頑張りますので、これからもお話を楽しんでください😊 (4月9日 18時) (
レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - めめこさんの書くお話が、占ツクに投稿されているお話の中で一番好きです。更新楽しみに待っています。 (4月4日 19時) (レス) @page42 id: 159543e1b4 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - アッキーナさん» 読んで頂きありがとうございます！嬉しいお言葉です✨ (2月8日 7時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
アッキーナ(プロフ) - 素敵なお話すぎて一気に読んでしまいました！この先の展開楽しみにしてます。 (1月31日 16時) (レス) id: ee5b45e1af (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - 海嵐さん» ありがとうございます！今後の展開も楽しみに読んで頂けたら嬉しいです！ (1月6日 18時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2023年12月29日 19時
