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骨ばった店長の手に腕を掴まれると、そのまま彼の方へと引き寄せられる。
それから彼の前にスッポリと収まると、花火の音に紛れて頭上から店長の声が降ってきた。
「お前の位置、花火見えへんやん。こっちのがええやろ」
『え？』
そう言われ、私はやっと目の前へ視線を向けた。
確かに、先程の位置よりもずっと見やすい。
もしかして、さっきのはそれを確かめる為に？
やっぱり、彼に他意などなかった。私ばっかり意識してしまう･･･。
『そこは普通、場所交換するよって言いません？』
本当はただ、ありがとうとお礼を言うだけで良いのに、この胸の引っ掛かりにモヤモヤして、そんな減らず口を叩いてしまった。
「場所変わったら今度は俺が見えんくなるやんけ」
しかし、店長の方は特に気にした様子もなく、ケラケラと笑ってそう言う。
一見、ぶっきらぼうにも感じる店長の言動も、私にはあまりにも優しくて、そして苦しい。
『･･････そうですね。ありがとうとございます』
「かまへんがな」
背中かからじんわりと伝わる彼の体温と、この夏の暑さに、私はのぼせ上がってしまいそうだった───。
のぼせた。
この人混みと熱気、暑さ、疲労。原因は様々だろうが、花火が終わる頃には、私は体調不良でぐったりとしてしまっていた。
そして今、駅へと向う人の波を尻目に、私はベンチで屍のように座っている。
「すまんな、すぐに気付かへんくて。ほら、もう一口飲んどき」
『いえ･･･こちらこそ、すみませ･･･』
全て言い終えないうちに、口へ突っ込まれたペットボトルによって、謝罪の言葉は消されていった。
冷えたミネラルウォーターが、喉から胃へと流れ落ちていくのがわかる。
その爽快さだけで、少しは気分が回復したような気がした。
「まあ、どーせこっから駅の方行くんにも混んどるやろうし、しばらくここで休んでくのが正解やろ」
気にせんでええて、と店長の手が私の前髪をクシャリと撫でる。
掠めていった指先にこそばゆくなって、引き始めていた熱がまたぶり返しそうだった。
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めめこ(プロフ) - ゆきさん» 励みになるコメントありがとうございます！✨ 更新頑張りますので、これからもお話を楽しんでください😊 (4月9日 18時) (
レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - めめこさんの書くお話が、占ツクに投稿されているお話の中で一番好きです。更新楽しみに待っています。 (4月4日 19時) (レス) @page42 id: 159543e1b4 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - アッキーナさん» 読んで頂きありがとうございます！嬉しいお言葉です✨ (2月8日 7時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
アッキーナ(プロフ) - 素敵なお話すぎて一気に読んでしまいました！この先の展開楽しみにしてます。 (1月31日 16時) (レス) id: ee5b45e1af (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - 海嵐さん» ありがとうございます！今後の展開も楽しみに読んで頂けたら嬉しいです！ (1月6日 18時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2023年12月29日 19時
