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驚きながら視線を上げると、またあの切なそうな瞳と目が合った。
今、彼は何を思っているんだろう。
今、彼の中には"誰"がいるんだろう───。
『えっと･･･どうぞ、上がってください』
沈黙を先に破ったのは、私の方だった。
身を端に寄せて、店長が入れるだけのスペースを作る。
だが、彼はすぐに頭を振った。
「いや、ええわ。少し様子見に来ただけやし、俺がいたらAもゆっくり休めへんやろ。ほい、言われてたやつ」
頭の上の温もりと引き換えに、店長はコンビニの袋をこちらに差し出すと、顎で指して受け取るよう促してきた。
『───ありがとうございます』
それもそうか。仮にも男性を部屋に上げるなんて、不用心にも程がある。
先ほど注意されたばかりだというのに、必死な自分に思わず自嘲の笑みが浮かんだ。
受け取った袋の中を覗けば、頼んでいたゼリー飲料とスポーツドリンク、そして覚えのないレトルトのお粥が入っていた。
「お粥あたりなら食べれるやろ？消化ええし」
まるでこちらの心中を察したかのように、店長から補足の言葉が入る。
『はい、ありがとうございます。あっ、そうだ、お金───』
「ええよ。大した額とちゃうし」
『でも･･･』
わざわざ自宅まで来てもらっているし、少額とは言え気が引ける。
そして私が渋っていると、店長からフッと気が抜けたような溜息が漏れた。
見上げれば、やれやれとでも言うような、困った笑みを浮かべていた。
「じゃあ、お茶の一杯でもご馳走してもらえるか？」
『───はい！』
恥ずかしいくらい、今の私はしっぽをブンブンと振っているのだろう。
でももう今さら澄ました態度は取れなくて、バカみたいに高揚しながら、彼を部屋の奥まで案内していた。
本来なら客人である店長を私がもてなすはずだったのだが、どういう訳か今、私は満たされたお腹を擦りながらベッドに入っていた。
「薬飲み終わったかー？」
『はい』
そしてキッチンからは、洗い物をする水音と共に店長の声が飛んでくる。
店長を部屋に招き入れたものの、病人は寝ていろと言われ、その後は食事の用意をしてもらい、額の冷感シートを交換され、薬と体温計を手渡されて今に至る。
私がやった事と言えば、せいぜい店長に出すお茶をコップに注いだくらいだろうか。
しかもそのコップも、今は店長が洗ってくれている･･･。
私は本当に、店長に一銭も払わなくて良いのだろうか？
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めめこ(プロフ) - ゆきさん» 励みになるコメントありがとうございます！✨ 更新頑張りますので、これからもお話を楽しんでください😊 (4月9日 18時) (
レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - めめこさんの書くお話が、占ツクに投稿されているお話の中で一番好きです。更新楽しみに待っています。 (4月4日 19時) (レス) @page42 id: 159543e1b4 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - アッキーナさん» 読んで頂きありがとうございます！嬉しいお言葉です✨ (2月8日 7時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
アッキーナ(プロフ) - 素敵なお話すぎて一気に読んでしまいました！この先の展開楽しみにしてます。 (1月31日 16時) (レス) id: ee5b45e1af (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - 海嵐さん» ありがとうございます！今後の展開も楽しみに読んで頂けたら嬉しいです！ (1月6日 18時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2023年12月29日 19時
