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「Tシャツまでびっしょりやんか。A、帰り電車やろ？どうすんねん、これ･･･」
『まあ、仕方ないですね。ある程度の水気は絞って、このまま帰ります』
「ほんなら、少し待っとき。俺のシャツ貸したるわ」
『え？』
赤い頬のまま、思わず店長の顔を凝視してしまった。
そして彼はニッと口角を上げると、私の頭を軽く撫で、扉脇に立て掛けていた傘を引っ掴んだ。
「俺の家すぐ近くやから。10分くらいで戻ってくるわ」
『え、でも･･･』
こうなったら、何を言ってももう聞かないだろう。
ええから、と私の遠慮の言葉を振り切ると、店長はそのまま店を出ていってしまった。
『行っちゃった･･･』
ほんと、何で私にここまでしてくれるんだろう───。
宣言通り、店長は10分で帰ってきた。
濡れた体のままではイスに座るのも憚られ、部屋の隅で手持ち無沙汰に突っ立っていると、「戻ったぞ〜」という声と共に扉が開く。
「ふぃ〜･･･雨どんどん強なってきたわ」
そうぶつくさと言いながら、傘の水滴を払って、定位置である扉脇に立て掛ける。
『雨の中ありがとうございます』
申し訳無さを込めながら礼を言って、私は店長のもとまで歩み寄った。
「ほれ」
すると、目の前にコンビニ袋が突き出された。
え？家に替えのシャツを取りに行ったんじゃなかったっけ？
想像していた物と、目の前に差し出された物のギャップに、私は一瞬戸惑う。
しかし、ぎこちなくもその袋を手に取り中を覗けば、綺麗に畳まれたTシャツがちゃんと入っていた。
「すまん。ちょうど良さそうな袋が見当たらんくて。でも、入れられれば何でも一緒やろ」
『そうですね･･･』
そう平然と言ってのけた彼に、これ以上の言葉は不要だろうと思った。
どこまでもシンプルな考え方をしている。
『じゃあ、着替えてきます』
店長に軽く会釈し、着替えの為にトイレを借りようと踵を返した時だった。
「ちょい待ちや」
少し冷えた手に手首を掴まれ、引き止められる。
振り返ると、店長の大きな目と視線がぶつかった。
「一応、もう1枚タオル持っていき？」
そう言うやいなや、店長はすぐに新しいタオルを取ってきてくれて、それを私に手渡した。
『ありがとうございます』
店長の優しい気遣いにペコリと頭を下げると、ふんわりと穏やかな笑みを返される。
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めめこ(プロフ) - ゆきさん» 励みになるコメントありがとうございます！✨ 更新頑張りますので、これからもお話を楽しんでください😊 (4月9日 18時) (
レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - めめこさんの書くお話が、占ツクに投稿されているお話の中で一番好きです。更新楽しみに待っています。 (4月4日 19時) (レス) @page42 id: 159543e1b4 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - アッキーナさん» 読んで頂きありがとうございます！嬉しいお言葉です✨ (2月8日 7時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
アッキーナ(プロフ) - 素敵なお話すぎて一気に読んでしまいました！この先の展開楽しみにしてます。 (1月31日 16時) (レス) id: ee5b45e1af (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - 海嵐さん» ありがとうございます！今後の展開も楽しみに読んで頂けたら嬉しいです！ (1月6日 18時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2023年12月29日 19時
