ライラック ページ20
降るかなぁ？
店の入口の施錠をし、札を"Closed"へと変えた私は、どんよりとする空を眺めた。
それから、店先のプランターへと視線を移し、先月頃から咲き始めた紫蘭の花を眺める。
ピンクにも近い紫色の花で、開きすぎない細長い花びらが妖精のスカートのようにも見えて可愛らしい。
昔から一番好きな花だ。
───プルルルル･･･
すると、店の電話が鳴った。
こんな滑り込みで掛けてくるなんて、いったい何だろうか。
私は足早に戻ると、レジ締めをしている店長の代わりに電話を取った。
『はい、フラワーショップ ヴィレッジアップです───あ〜、こんばんは！いつもありがとうございます！はい、はい───あ、今からですか？少しお持ちください･･･』
私は愛想の良い声で断りを入れてから、保留ボタンを押した。
電話の相手は、ご贔屓にしていただいている焼肉店からだった。
焼肉店と言っても、私が普段行くような大衆的な所ではなく、どこそこの社長だとか、大手企業の役員クラスが使うような高級志向の店である。
『店長、明日の配達予定だったアレンジメント、急遽今からお願いできないかって電話なんですが───』
そして、粗方の事情を店長に伝えてみると、レジの画面から一切視線を外す事なく、無言で手だけをこちらに寄越してきた。
恐らく、代われという事だろう。
私は電話の保留を解除してから、子機を店長に渡した。
「あいあーい、まいどですぅ」
相変わらずすごい電話の出方だ。
「はいはい、ええですよ。ほんなら今から伺いますんで」
そして店長は二つ返事で了承すると、切った電話を再びこちらへ寄越した。
「すまん、キリのええとこまでやるから、レジ締め交代してくれるか？ちょっくら配達行ってくるわ」
『あ、それなら私が配達してきますよ？』
先程の焼肉店は隣駅の繁華街にあり、この店からもそれほど遠くない。
私の足でも、歩いて15分もあれば着くだろう。
何より、金勘定の作業を途中で代わるというのは、できれば避けたい事だ。
しかし、そこでようやくこちらを向いた店長の表情は、あまり芳しい物ではなかった。
「ホンマに大丈夫か？こんな時間にあの界隈一人でうろついて･･･」
『心配し過ぎですよ。それにどこから見ても花屋ですし、わざわざ声を掛けてくる人なんていませんって』
「んー･･･」
『アレンジメント、もう仕上がってましたよね？』
尚も渋る店長を無視し、私は無理やり話を進めると、早々に配達に出た。
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めめこ(プロフ) - ゆきさん» 励みになるコメントありがとうございます！✨ 更新頑張りますので、これからもお話を楽しんでください😊 (4月9日 18時) (
レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - めめこさんの書くお話が、占ツクに投稿されているお話の中で一番好きです。更新楽しみに待っています。 (4月4日 19時) (レス) @page42 id: 159543e1b4 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - アッキーナさん» 読んで頂きありがとうございます！嬉しいお言葉です✨ (2月8日 7時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
アッキーナ(プロフ) - 素敵なお話すぎて一気に読んでしまいました！この先の展開楽しみにしてます。 (1月31日 16時) (レス) id: ee5b45e1af (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - 海嵐さん» ありがとうございます！今後の展開も楽しみに読んで頂けたら嬉しいです！ (1月6日 18時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2023年12月29日 19時
