ポピー ページ14
「───平日やけど、けっこう賑わってるもんやな」
『本当ですね』
目の前の光景に感嘆の声を漏らした店長。
それに対し、私も同調の頷きを返す。
私達は大倉君から貰った割引券で、店休日に遊園地へ訪れていた。
聞けば、大倉君と一緒に行くはずだった相手の予定がダメになってしまったそうで、休みの合う店長と行ったらどうかと提案されたのだ。
園内には陽気な音楽が流れ、花壇には赤やピンクのポピーが植えられていた。
そして時折、ジェットコースターの方から絶叫する声がこだましている。
『どれから乗りますか？』
私はインフォメーションカウンターの脇に置かれた園内マップをくすねると、それを広げながら隣の店長へ声をかける。
「Aが乗りたいやつでええよ。それかあんま待たへんやつ」
あまり待たないやつ、か。
店長のせっかちな性格がよく出ている。
『私の乗りたいやつが待ち時間長かったら、どうするんですか？』
「そしたら待つがな」
『待ってくれるんだ･･･』
ちょっぴり驚いた。てっきり拒否されるのでは、と思っていたから。
けれど同時に嬉しくもなって、私はウキウキとしながら再びマップへと視線を落とした。
すると、それに倣うように店長もマップを覗き込んでくる。
僅かに肩が触れ、先程よりもずっと近くにある彼の横顔に、なんだか妙に緊張してしまった。
『───じゃあ、コーヒーカップはどうですか？』
「ん、ええよ？」
コーヒーカップに乗りたいだなんて、少し子供じみていたかな、なんて思ったが、店長は快く頷いてくれた。
やっぱり、優しい人だ。
その笑顔を見たら、ついこちらの頬も緩んでしまった。
やはり、遊園地という所は何歳になっても、人の心を高揚させてくれる素晴らしい場所だ。
割引券を譲ってくれた大倉君に感謝である。
彼には後でお土産を買っていってあげよう。
そんな事を考えながら、私は軽い足取りでお目当ての乗り物へと向かった。
＊＊＊
「───はぁ〜、そこ座ってちょっと休憩するか」
『そうですね』
今しがた買ったばかりの飲み物を手に、私達は近くのベンチへ腰を下ろした。
「乗ってるだけやのに、意外と体力消耗するな･･･」
『そう言う割に楽しそうでしたけど』
「楽しいは楽しい」
『素直･･･』
周りのアトラクションに目をやりながら、少年のような表情でストローを咥えている店長の横顔に、ついクスリと笑いたくなる。
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めめこ(プロフ) - ゆきさん» 励みになるコメントありがとうございます！✨ 更新頑張りますので、これからもお話を楽しんでください😊 (4月9日 18時) (
レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - めめこさんの書くお話が、占ツクに投稿されているお話の中で一番好きです。更新楽しみに待っています。 (4月4日 19時) (レス) @page42 id: 159543e1b4 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - アッキーナさん» 読んで頂きありがとうございます！嬉しいお言葉です✨ (2月8日 7時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
アッキーナ(プロフ) - 素敵なお話すぎて一気に読んでしまいました！この先の展開楽しみにしてます。 (1月31日 16時) (レス) id: ee5b45e1af (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - 海嵐さん» ありがとうございます！今後の展開も楽しみに読んで頂けたら嬉しいです！ (1月6日 18時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2023年12月29日 19時
