■8(大倉side) ページ8
「･･････あいつ、なんやねん･･･」
深い溜息が出た。
急に膝に力が入らなくなって、冷たい壁にもたれながら脱力するようにしゃがみ込む。
心臓を掴まれたみたいに苦しくて、同時に甘くこそばゆい感覚がじんわりと広がっていく。
───なんで、こんな顔が熱くなってんねやろ。
いつから？
マルにばっかり笑顔を向けられると悔しい。
マルにばっかり照れたように顔を赤くされると気に食わない。
マルの話ばっかりされると楽しくない。
そんなふうに思うようになったのは、いつからやった？
「俺、いつから───」
───Aの事が気になってたんやろ。
風呂から上がり髪の毛を拭いていると、廊下から「ただいま〜」というマルのお気楽な声が聞こえてきた。
その足音は、そのままリビングへと向かっていく。
「ええっ！？ 何！？ この毛布の塊なに！？」
そして、何やら大きなリアクションを取っていた。
俺は洗面所から出ると、半開きになっているリビングルームのドアから中の様子を覗いた。
するとマルの言うとおり、確かにソファの背もたれの後ろに毛布の塊が鎮座している。
『すみません･･･私が悪いんです･･･！』
「Aちゃん！？」
毛布の塊の中から聞こえてきたのは、彼女の涙声だった。
「すげぇ･･･アマテラスの岩戸みたいやな」
マルのその感想に、内心で「どういう事やねん」とついツッコミを入れてしまった。
大方、彼女が隠れている毛布の塊が、マルには大岩に見えたのだろう。
この状況で古事記の内容が頭に浮かぶ辺りが、流石と言うべきか。
「どないしてんAちゃん」
マルはそう優しい声音で彼女の名前を呼ぶと、毛布を掻き分けてその姿を探した。
そして、ひょっこりと頭を出したAの顔面は、赤く火照り涙でぐしゃぐしゃになっていた。
「わぁ･･･汗めっちゃかいとるやん、熱中症なってまうで───」
『私が悪いんです･･･』
「え？」
『大倉さんと丸山さん、今日は帰りが遅いだろうと思って･･･私、こっそり下のバスルームを使おうとしました･･･』
「･･････うん。なんか懺悔の内容めっちゃ小さいな」
『すみません･･･』
「あー、もうわかったから！1回汗拭こう？な？このままじゃ逆に風邪引いてまうかもやし！」
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匿名希望 - 更新ありがとうございます！めちゃくちゃ好きです！ (2022年10月11日 1時) (
レス) @page27 id: cc9a8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新ありがとうございます！続きがたのしみです◎ (2022年4月5日 4時) (レス) @page4 id: d8f1726f33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2022年4月3日 17時
