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少し冷たくなってきた夜風のせいもあってだろうか。
やけに、彼の手が温かく感じた。
「逃げるな」
大倉さんの言葉が、その視線と共に真っ直ぐと私の心へ刺さっていく。
けれど、不思議と嫌な気持ちではなかった。
寄り添い、後ろからそっと背中を押してくれているような、温かい優しさすら感じる。
───きっと、大倉さんなりに私に向き合ってくれているのだと思う。
そう思うと、あんなに怖いと思っていた目の前の彼が、途端に頼もしい相手になった。
『───ありがとうございます。なんか、初心に返れた気がします』
「どういたしまして」
返事こそ少しぶっきらぼうだったが、見上げた大倉さんの表情は優しく、口元にはニッと笑みを携えていた。
それから、私の頭をグリグリと撫で回すと、あっさりとその手は離れていく。
『なんだか、不思議です』
「不思議？何が？」
『この前もでしたけど、大倉さんって、いつも私が欲しいと思う言葉をくれるなって』
───誰かの楽の為だけに、Aが犠牲になるんも違うやろ───
まるで私の無意識下にある感情を読み取っているのかと思うほど、この人の言葉はストンと心に落ちてくるのだ。
もちろん、優しい言葉ばかりではないし、図星をついてくるような厳しい言葉もある。
けれど同時に、大倉さんの表情や声色、言葉の端々から、彼の誠実で優しい部分が垣間見える。
『あの、本当に失礼な事は承知なんですけど、初めの頃は大倉さんの事が悪魔のように見えてて･･･』
「･･････悪魔」
『いや！でも、本当に最初の頃だけです！今はちゃんと、こんな私にも優しくしてくださってるのを実感してますから！』
心外だと言うように、大倉さんの表情が僅かに曇ったので、私は慌てて言葉を付け足した。
すると、大倉さんのまとう空気感が僅かに変わるのを感じた。
先程よりも真剣に、それでいてどこか妖艶で、優しくて少し怖い。
「───じゃあ、なんでやと思う？」
『え･･･？』
「なんで、お前のためにそこまですると思う？」
想像もしなかった質問に、私の思考は途端に働かなくなった。
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匿名希望 - 更新ありがとうございます！めちゃくちゃ好きです！ (2022年10月11日 1時) (
レス) @page27 id: cc9a8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新ありがとうございます！続きがたのしみです◎ (2022年4月5日 4時) (レス) @page4 id: d8f1726f33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2022年4月3日 17時
