■27(大倉side) ページ27
『うっ･･･！』
「最後のすみませんは不要やぞ？せっかくええ事言うてたんに」
『え･･･！い、良いこと言えてましたか？』
「ん、言えた。知らんけど」
『え･･･！？』
面白いくらいコロコロと彼女の表情が変わっていくもんだから、俺はつい声を上げて笑ってしまった。
「───まあでも、Aのその悩みは、俺もわかるよ」
『え、大倉さんも、ですか？』
「おん、俺もライブの演出とかさせてもらうからさ、ほんまにこれでお客さんに喜んでもらえるんかとか、どうやったら楽しんでもらえんのかとか、むっちゃ考えるし、悩む」
『なんだか、すごく意外です。なんでも卒なくこなす方だと思ってたので』
「全然やで。でも多分それは、みんな同じやと思う。そらたまに、ホンマに卒なくこなせる人もおるやろうけど、大体の人はむっちゃ悩んで、もがいてるよ」
『丸山さんも、ですか？』
「うん。てか、マルなんて酷いもんやで」
結局また、話題がマルになってしまった。
しかし、こちらの返答にクスクスと笑ってくれたAに、少しはホッとした。
きっと、出会って間もないあの頃だったら、こんなふうに落ち込むAの姿を見たら、苛立っていたに違いない。
どうしていつも、そんなに自信なさげにしているのか、人に合わせて、無理して笑って。
けれど、今なら少しはわかるのだ。
Aの真面目で優しすぎる気遣い屋な性格が、そうさせてしまっているのだと。
でもそれは、いつか彼女自身を壊してしまうのではないかという危うさをも感じさせる。
だが、そうはなって欲しくないと思う事自体が、そもそも俺のエゴでしかないんだろうか───。
サンルームの天窓から入ってきた夜風が、俺たち二人の髪をふわりともてあそんでいった。
俺はAの前髪を指先で直すと、そのまま彼女の頭に手を置く。
すると、大きな瞳がキョトンとしてこちらを向いた。
「───だから、」
───それでも、たとえエゴだったとしても、
「逃げるな」
彼女には、上を向いて心から笑っていてほしいのだ。
好きな人だから。
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匿名希望 - 更新ありがとうございます！めちゃくちゃ好きです！ (2022年10月11日 1時) (
レス) @page27 id: cc9a8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新ありがとうございます！続きがたのしみです◎ (2022年4月5日 4時) (レス) @page4 id: d8f1726f33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2022年4月3日 17時
