■26(大倉side) ページ26
『前にも、頼み込んで自分の企画を通してもらった事があったんです。でも、結果は全然売れなくて･･････あはは』
Aは最後に乾いた笑いを付け足し、不器用に作った笑顔をこちらに向ける。
それが、酷くいたたまれなかった。
『あの、だから、また今回もみんなの足引っ張るんじゃないかって考えたら、企画出すのすら申し訳ないというか、その･･･』
必死に言葉を繋ごうとしているのが伝わってくる。
そして、同時に彼女の心が痛め付けられていくのも───。
「───それ、1個も売れへんかったん？」
『え？あ、いえ。1つも売れなかった訳では･･･ただ、発売したカラーの中では、ダントツ人気が無かったというか･･･』
「でも、少なからずAが考えた商品を買ってくれた人がいんねやろ？お前がそんな言うたら、それを気に入って買ってくれた人の気持ちはどうなん？失礼なんちゃう？」
『･･････』
Aの顔から、無理やり貼り付けていた笑顔が消え、それと同時にその目からポロポロと涙がこぼれだす。
それを見た瞬間、俺はハッとした。
アカン･･･泣かせてもうた･･･！
「いや、その、別に今のはAの事責めた訳やなくて･･･」
『違うんです』
「へ･･･？」
『違うんです。大倉さんの言う通りだなって、思って』
鼻を啜りながら、頬を流れていく涙を手の甲で拭うと、再び彼女は口を開く。
『私、女の子が化粧品を選んでる姿を見るのが好きなんです。何色もテスター試して、真剣に、でもどこか楽しそうに悩んで、やっと決めた1つをレジに持って行って───』
そう語り始めたAの表情が、幾分か柔らかくなった気がする。
『それが、ほんの少しでも、その人の自信とか勇気とか、何か後押ししてくれるようなものになれたら、嬉しいなって･･･思って･････････すみません、こんな自分語りを･･･』
段々と尻すぼみになっていった彼女の声は、最終的に己の手によって塞がれてしまった。
そして自分の口元に手を当てたまま、こちらを伺うような視線をチラチラと向けている。
俺はクスリと一つ笑って、彼女の額にパチンとデコピンをお見舞いしてやった。
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匿名希望 - 更新ありがとうございます！めちゃくちゃ好きです！ (2022年10月11日 1時) (
レス) @page27 id: cc9a8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新ありがとうございます！続きがたのしみです◎ (2022年4月5日 4時) (レス) @page4 id: d8f1726f33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2022年4月3日 17時
