■25(大倉side) ページ25
『おっ、お、大倉さん！？あれ？え、あの、いつから･･･！？』
その想像以上の慌てぶりに、俺は我慢できずに吹き出してしまう。
「アッハハ！どんだけ集中しててん！今どき小学生でもそこまで真剣な花占いやらんて」
『え！？み、見てたんですか･･･！？』
「見てたんやなくて、見せられてたんや」
『･･････す、すみません』
途端に、彼女の表情がしょぼくれた物になる。
俺はそれをフッと笑うと、缶ビールのフタをプシュッと開け、それをAに手渡す。
彼女は少しの間、俺とビールとを呆けた顔で何往復かしたが、最後には『どうも』と言って、その缶を受け取った。
そして俺も、彼女の隣に腰を下ろす。
「───なんかあったん？」
『へ？』
「なんか、思い詰めてんのかなって───ええ大人が花占いに頼るくらいには？」
『あはは･･･』
彼女から、誤魔化すような苦笑が漏れる。
それから、缶の縁をソワソワと指先でなぞりながら、彼女は言葉を紡ぎ始めた。
『───実は、来年のバレンタインに出す新商品の企画を、全員が提出するようにって、チームリーダーに言われまして･･･』
「なに？アイディア浮かばへんの？」
仕事の悩みだったか。
しかし、彼女は俯きがちなまま、首を横に振った。
『アイディアは浮かんでるんです。でも、それを提出するのが･･････怖くて』
なんで？
そう言いかけて、俺はすぐに口をつぐんだ。
何かに耐えるように、唇を噛み締める彼女の横顔を見たら、「なんで？」なんて問い詰めるような声掛けは、酷なような気がしたのだ。
「･･････何か、あったん？」
すると、Aがパッとこちらを振り向いた。
呆気に取られた様な、でもどこか嬉しそうな、なんとも言い難い表情だった。
それからまたすぐに手元の缶ビールへ視線を落とすと、ゆっくりと話し始める。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 221人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
匿名希望 - 更新ありがとうございます！めちゃくちゃ好きです！ (2022年10月11日 1時) (
レス) @page27 id: cc9a8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新ありがとうございます！続きがたのしみです◎ (2022年4月5日 4時) (レス) @page4 id: d8f1726f33 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：めめこ | 作成日時：2022年4月3日 17時
