■22(大倉side) ページ22
『えっと、丸山さんと飲んでて･･･ゾンビ観てて･･･リビングにいて･･･』
そして、ベッド脇に突っ立ったままの俺を再度見上げると、Aの目が大きく見開かれていった。
『あ、あのっ！おはようございます！おかえりなさい！お疲れさまです･･･！えっと、えっと･･･』
その面白いくらいの慌てぶりに、俺は我慢できずに吹き出してしまった。
「フッ！どんだけ慌ててねん」
『すみません、あまりに驚いてしまったもので･･･！あの、また大倉さんに運んでもらってしまいました、よね？すみませ･･･ハッ───』
忙しいやつやな。
忙しなくペコペコと頭を下げていたかと思えば、今度は何かに気付いたのか、慌てて己の口を両手で押さえていた。
恐らく、無意識のうちに「すみません」を連呼していた事に気が付いたのだろう。
そして、いつくらうかわからないデコピンに備えてか、ギュッと固く目をつむる。
まるで小動物のおもしろ映像でも見せられている気分だ。
俺は小さく笑みをこぼすと、Aの頭をくしゃりと撫でる。
『･･････へ？』
彼女から、間抜けな声があがった。
「今のはセーフ」
『セ、セーフですか･･･。良かったです』
眉を下げてニヘラと笑う彼女に、また胸の辺りがこそばゆくなる。
『そういえば、丸山さんは───？』
しかし、次にはもうマルの名前が上がり、先程とは違う感覚が胸を締め付けた。
「マルやったら、リビング片付けてるけど」
『え！どうしよう、丸山さん一人にやらせてしまって･･･！』
そして、俺の返答を聞いたAは慌てて立ち上がると、ヨロヨロとおぼつかない足取りで部屋を出ようとする。
だが、俺がそれを止めていた。
『大倉･･･さん？』
「あ･･･」
無意識に伸ばしていた手が、Aの細い手首をしっかりと掴んでいた。
「･･････行かんで？」
マルの所に───。
きっと、これが本音だ。
『･･･あの、でも、丸山さんだけに片付けてもらうのは申し訳ないですし───』
普段とは違う空気を察したのか、Aの視線が不安気に泳いでいる。
「大丈夫やって。そんな散らかってた訳でもないし」
しかし、それでも彼女は素直に頷けないようで、『でも、』と煮えきらない声をあげていた。
「･･････」
そして、俺も何をそこまで意地になっているのだろうかと、己の無意味な行動に気付く。
ここで止めたところで、彼女のマルへの気持ちがなくなる訳ではないのに───。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 221人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
匿名希望 - 更新ありがとうございます！めちゃくちゃ好きです！ (2022年10月11日 1時) (
レス) @page27 id: cc9a8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新ありがとうございます！続きがたのしみです◎ (2022年4月5日 4時) (レス) @page4 id: d8f1726f33 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：めめこ | 作成日時：2022年4月3日 17時
