■20(大倉side) ページ20
そして、そんなAの姿に心がむず痒くなるのと同時に、またこの男に先を越されてしまったと、悔しいような落胆したような、なんとも形容しがたい感情が湧いた。
すると、のそりと立ち上がったマルが、こちらへ両手を差し出してきた。
「はい、俺がAちゃんベッドまで運ぶから、たちょは荷物置いてきぃ？」
マルの肉厚なゴツい手が、彼女を渡せと更にこちらへ寄ってくる。
だが俺は、半ば無意識的にその手から体を遠のけていた。
疑問符を浮かべたマルの視線がこちらを向くから、俺は必死に言い訳を探す。
「フラフラの酔っ払いに任せられるかいな。落としたらどないすんねん。それよりマルはテーブルの上片付けといて？」
これでもかと、俺は矢継ぎ早に言葉を並べていた。
それに対し、マルは渋々頷くと、口を尖らせながら「へ〜い」と返事をする。
うまく、誤魔化せたんやろうか？
思わず安堵の息が漏れる。
「なあ、」
しかし、踵を返した所で、再びマルに引き止められた。
振り返れば、先程までのヘラヘラとした表情とは違い、何だか複雑そうに片眉を下げたマルと目が合う。
「───Aちゃんと何かあったやろ？この前」
「･･････」
皆まで言わずとも、先日の風呂場で鉢合わせた時の事を聞いているのだと、すぐにわかった。
はぐらかすべきか。ありのままを言うべきか。
別にやましい事をした訳ではないのだから、こちらが気を遣ったり萎縮する必要はどこにもない。
けれど、それをこの男に話しても良いのだろうかという迷いが、咄嗟に浮かんだのだ。
俺は一度、彼女の寝顔に視線を落としてから、今度はマルの方を真っ直ぐと見据えた。
そして、ゆっくりと口を開く。
「───別に、ちょっと風呂場で鉢合わせただけや」
「ふーん、そっか･････････え！？」
3秒ほど遅れて、こちらの言葉を理解したらしい。
さっきまでの寝ぼけた表情はどこにもなく、切れ長の目をまん丸に見開いていた。
「え、ちょっ･･･鉢合わせたん？」
「うん」
「え、み･･････見たんか･･･？」
こいつ、アホか。
散々目を泳がせ、どもった末に出た言葉がそれか。
おまけに、鼻の穴が若干ふくらんだのも見逃さなかった。
まあしかし、一番心配な部分と言えばそれに尽きるか。
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匿名希望 - 更新ありがとうございます！めちゃくちゃ好きです！ (2022年10月11日 1時) (
レス) @page27 id: cc9a8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新ありがとうございます！続きがたのしみです◎ (2022年4月5日 4時) (レス) @page4 id: d8f1726f33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2022年4月3日 17時
