誰の子だって愛しい子 (ページ1)

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Prolog~あの人の背中~ ページ1

……10年前

「おら、飯だ食え。」

私は売り物だった。
でも、買われたところで雑用に使われるだけ。
私の人生は最初から決まっていたんだ。

私の淡藤色の瞳に光は宿らず、
青みがかった白髪は埃だらけの床に着き、
酷く汚れている。

人生は決まっていたとしても、私には夢がある。
綺麗な服を着て、可愛い髪飾りも付けて、
優しい誰かの隣を歩くこと。

……1度夢に見たんだ。

長身の角が生えた男の人、
可愛らしく1度女性に間違えるような容姿の人、
私と歳が近い様な銀髪の男の人、
ライムグリーンの髪をした男の人、
そして私で笑いながら歩く夢。

そんな人生だったらどれほど幸せだろう。

「おい、＿＿番。早く檻から出ろ。
今日こそはお前を買う輩が居るといいんだがな」

私は檻から出て、首輪を付けられた。
そして、少し歩くと街中のとある場所に着いた。
そこには私と同じ様な女性がたくさん居る。
ここに居る女性は皆、私と同じ売り物なのだ。

通行人は私達を憐れむ目で見てくる。
その視線はもう慣れたものだ。
客にベタベタと触られ気色が悪い。
私の状態を確認しているのだろう。

私は心はどん底だった。
その時、私の瞳に映ったのは、

人より頭1つ、否、2つ飛び抜けた長身。
フードから覗くライムグリーンの瞳。
間違いない。夢で見た人。
隣に居る同行者も夢で見た中性的な容姿の人だ。

次の瞬間、私は人を掻き分け、
その人の足にしがみついていた。

『……』

？？「僕に何か用か？」

品のある低い声。
私はずっと声を出していないし緊張で声が出ない。

？？「なんじゃ？マレウス。
子供に好かれるようになったのか？」

『たす…けて…っ！！』

やっと出た声はガスガスで途切れ途切れだったけど、
2人は目を見開いた。私の声は届いた様だ。

？？「お主、何処から来たんじゃ？」

そう聞かれ、私が口を開こうとした瞬間。

「おい！！＿＿番！！逃げるな！！」

私の息がヒュっと鳴るのが分かる。
そして、私に伸ばされた手を長身の人が振り払った。

？？「成程、この人の子は売り物なのだな。
良いだろう。いくら欲しい。
この人の子の為ならいくらでも出そう。」

「＿＿マドルだ」

前聞いた時よりも高くなっている。
長身の人に言われ気を良くしたのだろう。

？？「それだけでいいのか。」

そう言って、大量のマドルを突き出した。

？？「人の子。行くぞ。」

私は頷いた。
私はこうしてマレウスと言う名の男に買われた。