265話 ページ16
『…なら……一緒に行きますか？』
この言葉を言いながら、心の中では言わなければよかったと思った。
けど発し始めた時にはもう遅かったし、ブレーキをかけられなかった。
そのままこぼれ落ちたそれを拾って隠すことは、もうできない。
『(あーあ……)』
馬鹿なこと言ったなぁと自嘲する。
ソウさんの事だからきっと、バッサリと断るか少し引いたように狼狽えるかのどっちかだろう。
気まずい空気になる前に目を逸らそうとしたらその時だった。
「…いいかもね。」
今まで合わなかった目線がバチッと合う。
私の中で何かが弾けたような気がした。
ほんの数秒…いや、一秒にも満たないかもしれない。
『っ、カンナちゃんも一緒に行こう…！』
「え？」
何かに耐えられなくなった私は思わずカンナちゃんに振り向いた。
今度は立場が逆転して、私が彼女を誘っている。
『映画…私と…ソウさんと、三人で。』
「え…いいの？」
『もちろん。』
少し驚いたような顔をしたカンナちゃんに頷くとパッと花の咲くような笑顔を見せてくれた。
「楽しみだね…！」
「ん…何か見える……」
希望溢れる話をしていた私たちの耳に、それはスっと入ってきた。
ソウさんの示す先には階段の終わりがあり、もっと先に続いているようだった。
その先へと進むと、畳に障子……和室があったのだ。
フロアマップによれば、勝者の間…らしい。
「この先が…出口だよ。」
『(……ついに、私たちはここまで来たんだ。)』
「……行きましょう…！」
大きく深呼吸をしたサラさんが先頭を行く。
私たちはそれに続いて廊下を歩いていく。
期待で胸が震えた。
今にも走り出してしまいそうになったのを、拳を握りしめて押えた。
こんなにも日常を望んだことは無かった。
この先に待ち受けているのは、私達が望む
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 81人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ルイ(プロフ) - なうなうみるきぃさん» いつもありがとうございます！把握です！ (2022年11月24日 20時) (
レス) id: bd10cc1afe (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - さとりさん» 私的には同じ日に1話ずつ投稿するという風に考えております！ (2022年11月24日 20時) (レス) id: bd10cc1afe (このIDを非表示/違反報告)
なうなうみるきぃ(プロフ) - いつも作品読ませてもらってます！自分的には片方ずつ進めてほしいです。 (2022年11月24日 19時) (レス) @page18 id: 11bb46ad6e (このIDを非表示/違反報告)
さとり(プロフ) - 並行というのはその日カンナちゃんを書いて次の日にソウさんを書くということでしょうか？もしそうなら私は片方ずつを希望します。 (2022年11月24日 19時) (レス) @page18 id: efc4d587e8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ルイ | 作成日時：2022年11月9日 17時
