41の約束 ページ42
鼻につく鉄臭い匂い。
ガシューから流れ出た血が、遅くも早くもないスピードで近づいてきていた。
『カンナちゃん…血が……』
「！顔についてる…怪我、してない？」
『…うん。ごめん…』
顔に飛んできた、既に忘れていると思っていた不快感を思い出した。
しかし覚束無い様子の私を見かね、カンナちゃんは優しく制服の袖で拭ってくれる。
自分の服が汚れるのも厭わず、躊躇なく。
少し汚れてしまった袖を見てあまりに自分が不甲斐なくなって、泣きそうになった。
足元を見ると、ギリギリ流れてきた血が止まっていて安心する。
大丈夫、戻ろうと机に促した。
これ以上ガシューの近くにいたくなかった。いさせたくなかった。
「何でもします…！！何でもしますから…お願い…！！」
ナオさんがハンナキーに縋りつく。
けれど、彼女の運命は変えられない。
私が、彼女の希望を絶ってしまった。
ガシューの野望を許してしまった。
フロアマスターの規約によりメインゲームは続行される。
それがどういうことか？
＿＿＿＿終わりだということだ。
「…投票するなら、ソウか、カンナちゃんしかいない……」
その二人のどちらかを選ばなければ…全員死んでしまう。身代を選んだって、片方は助からない。それにナオさんが選ぶとしたらサラさんだろうし。
『(あぁ…なんでこんなに、冷静なんだろう……)』
違う。
冷静でいようとしている。
何も考えないようにしている。
自分の感情をシャットアウトしている。
そうしなければ、壊れてしまう。
多数決なんて、結局自分を苦しめることにしかならない自傷行為だ。
多数派なら少数派に嫌われ、少数派なら取って食い物にされる。
どうすればいい。どうすればいい。
このままだと二人のどちらかが死んでしまうのに、もう、取り返しのつかないところまできている。
そして私は、とても恐ろしいことに気がついた。
『(私……どっちに投票すればいいの…？)』
今まで自分を選んで逃げていた。
誰かを選びたくないから。
そっちの方が楽だから。
けれど今回は自分に入れることはできない。
誰に入れても…誰かを犠牲にする。
カンナちゃんかソウさんを…犠牲にする。
『(嫌だ…どっちにも、入れたくない…)』
どうすればいいの？
どうしたら、どうしたら…！
「＿＿＿＿＿…皆さん、投票は、カンナにしてくれませんか…？」
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ルイ(プロフ) - にしんさん» コメントありがとうございます！応援とても励みになります！これからも楽しんでいただけると嬉しいです！！ (1月16日 8時) (
レス) id: bd10cc1afe (このIDを非表示/違反報告)
にしん - 主人公の心情がよく見えて、すごく面白かったです！ 更新頑張って下さい、これからも応援してます！ (1月15日 21時) (レス) @page19 id: 8474802cab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ルイ | 作成日時：2023年12月24日 18時
