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40の約束 ページ41

ゆっくり、ゆっくりと足を動かした。


「一言だけ……」


バレないように。決して私に気づかないように。


「皆様、自分の生い立ちに疑問を持ったことは?」


この後に起こる悲劇を止めるために。

勝負は一瞬、一度だけ。


「それが…私からの最初で最後のヒントです。」

『(今…!!)』


ガシューが懐に手を入れようとした瞬間に、私は勢いよくガシューに飛びついた。

近づく私に気づかなかったのか、多少なりとも驚いたようで目を僅かに見開かせる。


「A…!?」


皆の驚いた声が聞こえた。けど、それを気にしている暇はない。


『絶対に…貴方の思い通りにはさせない…!!』


腕を掴んでどうにか行動を制限しようとする。

十中八九、取り出そうとしているのは拳銃だ。


「離していただけますか。」

『離さない…!死なせてたまるものか…!!』


私の言葉で皆に動揺が走った。


「まさか……フロアマスターの規約…”不正者の死を持ってメインゲームを続行する”…!?」


サラさんも思い出してくれたようだ。

するとガシューは、珍しく表情を歪めて口を開く。


「貴女も厄介ですね…あの人に、よく似ている。」

『(何…あの人…?)』


思いがけない言葉を言われてつい、力を緩めてしまった。

ほんのわずか、その一瞬を、ガシューは見逃してはくれなかったのだ。


『っあ…!』

「皆様、勝ち残ってくださいね。」








人生で、決して小さくない大きな破裂音をこんなに近くで聞いたことがあっただろうか。

擬音語で表すなら、バン!とか、パァン!とか、そんなところだろう。

ビチャッと顔に何かが飛んできたが、それが何かは理解できなかった。最早、存在さえ忘れている。

ただ目の前に倒れる男の、最期の笑みが脳裏に流れるばかりであった。


私の背後から、皆の嘆きが聞こえる。

気づいたのに。

ガシューの企みに、気づいたのに。


『ごめん、なさい……』


間に合わなかった。

みすみす死なせてしまった。


『ごめんなさい…ごめんなさい…!』


背中を包むような温もりを感じた。

肩口が湿っていくのが分かる。


「Aちゃんのせいじゃない…Aちゃんは悪くない…!気づかなかったのは、間に合わなかったのは皆一緒だよ…」


私を慰めてくれようとする友達(カンナちゃん)の温かさが、更に私を追い詰めた。

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ルイ(プロフ) - にしんさん» コメントありがとうございます!応援とても励みになります!これからも楽しんでいただけると嬉しいです!! (1月16日 8時) (レス) id: bd10cc1afe (このIDを非表示/違反報告)
にしん - 主人公の心情がよく見えて、すごく面白かったです! 更新頑張って下さい、これからも応援してます! (1月15日 21時) (レス) @page19 id: 8474802cab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ルイ | 作成日時:2023年12月24日 18時

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