28の約束 ページ29
「ソウ…君は何を知っているんだい？」
「僕が知っているのはAから聞いたことだけ。つまりここから話すのは、全部Aが言ったことだよ。」
『ソウさん…！』
まさか話すのか、皆に。
私のことを、ユキのこと。
心臓がドクドクと早くなり、視界が狭まっていくのを感じる。
何か色々なものがごちゃ混ぜになって、よく分からない感情が私を支配していた。
「…Aのお兄さんが誘拐犯の仲間なのは、少なくとも今はありえない。何故なら…」
『！』
「お兄さんはもう、二年前に死んでるから。」
あぁ、言われてしまった。
私の過去、私の家族のこと。
でもどうして、私は……
「し、死んで…！？」
「じゃあ様子がおかしくなっちまったってのはどういうことだ…？死んだことを言い換えたのか…？」
「そうじゃない。様子がおかしくなったのはもう一人の兄の方さ…そうだろう、A。」
『(なんで…)』
こんなにも、安心してしまっているんだろう。
こんなにも、ホッとしてしまっているんだろう。
まさかさっきの感情は、期待だったのだろうか。
自分で自分を貶めておいて、いざとなったら真実を語る勇気のない私の代わりに、彼が代弁してくれるのを、待っていたのだろうか。
きっとそうなのだ。
『……』
だからそんな勇気がない私は、口も開かずソウさんに甘えて頷くのみだった。
「まさか様子がおかしくなったって言うのは…」
ケイジさんが顔色を悪くして、何かを察したように黙る。
彼には私の家族が幻影を見ると言ったことがあるから、ユキの死がきっかけなのだろうと気づいてしまった。
他の皆も幻影のこととは知らずとも、兄弟を失ったことで心に傷を負ったのだと察したようだ。
「じゃあ…どうしてAはそんな嘘をついたぜよ…？」
「察しが悪いな…今までの会話を聞いて分からなかった？」
Qタロウさんが本当に分かっていないのか、それとも信じたくないのかは定かでは無いが、少なくともソウさんの言葉を聞いても何か言い返すようなことはしなかった。
「…私のため、なんだよね？Aちゃん。」
カンナちゃんが、私に歩み寄る。
でも私は、貴女が思うような心の綺麗な人間ではない。
善人などでは、決してない。
『カンナちゃんのため、なんかじゃない…私は、私のために嘘をついたの……』
そうだ。これはただの自己満足だった。
『私が…カンナちゃんに、ソウさんに、ただ生きて欲しかった。』
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ルイ(プロフ) - にしんさん» コメントありがとうございます！応援とても励みになります！これからも楽しんでいただけると嬉しいです！！ (1月16日 8時) (
レス) id: bd10cc1afe (このIDを非表示/違反報告)
にしん - 主人公の心情がよく見えて、すごく面白かったです！ 更新頑張って下さい、これからも応援してます！ (1月15日 21時) (レス) @page19 id: 8474802cab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ルイ | 作成日時：2023年12月24日 18時
