【Fate/Grand Order】人は、何を想い、何を願うのだろうかⅠ【派生作品】 (ページ8)

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　こうして、確かな約束を交わし邸宅を後にする直前に渡されたアタッシュケース。ある程度の重みがあるそれをリリーより受け取れば他でもない妹からの贈り物だというのだからその場で開かないという選択肢はない。

「中を確認してもいいか？」

「はい…勿論です」

かちゃりと錠を外し、中身を確認すれば一丁の拳銃がそこにはありそれが妹により作られたものであることは一目瞭然であった。

これはただの拳銃ではない、紛れもなく、魔術礼装だ。

「姉様には姉様の安定した戦いがあるとは理解していたのです…出過ぎたことだとはわかってはいたのですが…そのっ」

などと申し訳なさそうにする妹を目にすれば、誰が責められようか。
昨日姿を見せなかった理由、そして、こんなにも夜が明けぬうちに姿を現した理由は間違いなくそこに帰着するだろうから。

「これは魔石か？」

「はいっ。姉様の瞳と同じシルバーのものを…それはノアがはめてくれたんですよ」

「…そうか、ノアがな」

愛おしそうに撫でる姉を目にすれば、やはり行ってほしくはないという気持ちが先走るリリーであるわけだが、それは彼女が帰らない可能性を少しでも考えている自分がいることを認めることになる。

その手前、ここで引き留めるという選択肢はなかった。

姉はいつだって、決めたことは成し遂げてきたし、なによりも約束を守る人だから。

「使わせてもらおう。いってくる」

「…はい。いってらっしゃいませ」

そう一度別れの抱擁を交わせば再びアタッシュケースへと収納し後にする。
それからは飛行機に揺られ、深い眠りについた後、日本の地へと足を踏み入れたのはあっという間だったように思える。

この先には一体なにが待っているのだろう。とただ漠然と考えながら眺めた車窓はエインズワース邸から眺める夕日と確かに同じはずだというのにどこか寂し気に映る。

一体、私の召喚に応じてくれるサーヴァントはどのような英霊なのだろうか。

縁のある英霊と契約を結ぶというのが通例ではあるのだろうが、だとすれば我が英国に伝わる円卓の騎士か…もしくは、アーサー王。

「いやまさかな」

なんてひとり笑めば、目的地を知らせる案内を元にいよいよ、"その地"へと足を踏み入れる。

現地の時刻は18時前を指す頃だろうか。
下車し、とりあえずは工房へとなり得そうな地を探すべく歩みを進めれば元気な黄色い声が彼女の耳を掠めるのだった。