【Fate/Grand Order】人は、何を想い、何を願うのだろうかⅠ【派生作品】 (ページ49)

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間桐の家に伝わる魔術。
その属性は"水"にして、特性は"束縛"と"吸収"。

その"束縛"という側面に特筆して才能を発揮した間桐聡太は一族の期待と共にある１つの業を背負った。

それは"畏怖""恐怖"に類似した感情か。
両親より注がれる愛は、決して純粋なものではなくそれはいつ自身らが"支配"されるかという恐怖からくるもの。

少年は愛に飢えていた。

そんな彼の心が闇に侵されていくにはそう時は要さず。
殻に籠っていくのもまた必然だった。

"支配される"など一体誰が言い出したのか。
大した確証もなく大人が言い出した噂に少年の心は蝕まれ、闇へと堕ちていく。

少年の可能性を見出してくれる存在。
それが彼にとって今最も必要な存在だった。

聡太。貴方の魔術は決して恥じるようなものではないと思うのです。
"束縛"と聞けば聞こえは悪いですが、使い方を、見方を変えればそれは貴方の力になると。

今までの貴方の努力は決して無駄ではなかったとそう思える日が必ずくると。

誰が信じていなくても。
貴方自身が貴方を信じられなくても。

私だけは、貴方を信じています。それだけは忘れないで欲しい。

自分の力を信じて。
大丈夫、貴方なら必ず成し遂げられる。

だから、明日は私の背は貴方に。

それが、彼女。
アルトリア・ペンドラゴンという少年を心から信頼する英霊に出会った今、少年に迷いはない。

なにをすべきか。
どう在るべきか。もう迷うことはない。

少年は大志を抱き、見据えた。

自身の英霊を。尊ぶべき唯一の相方を。その瞳でしっかりと見据えればその瞳にもう影は差さない。

「アルトリア、僕を信じろ…！」

それは"支配"でもなく"束縛"でもない。
長年、聖杯戦争における令呪を担当してきた"間桐"の名に恥じぬ行い。

令呪と異なることといえば原動力か。

それは、"強制力"ではない。"信頼"という力。

束縛ではなく、思いを載せ、心を載せ。それが彼女の力となる瞬間。

それはきっと強化魔術など足元にも及ばない。
彼だからこそ可能にし得た魔術。思いを力に変える魔術。

これは一方通行では決して成立することはない。
敢えて例えるのなら、それは…魂の契約のようなものだった。

だからこそ、英霊は前を向ける。
今度こそ、信頼を得、マスターと最後まで肩を並べ戦うと決心できる。

「聡太、貴方の心しかと受け取りました…！」