【Fate/Grand Order】人は、何を想い、何を願うのだろうかⅠ【派生作品】 (ページ43)

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聖杯戦争、４日目を迎える冬木市――。

時計塔に数年在籍し、才能は凡人。
魔術師としてはむしろ、落ちこぼれ気味。

それが、彼、イライジャ・キャベンディッシュという男の生態。

彼の家は十三代続く魔術師としては名家も名家。
が、特段才能もなく加えて次男坊である彼に明るい将来などなく、歪みが生じるのもそう時を要さず。

ただ義務感だけに苛まれ生きてきた彼の人生に変化が訪れたのが数年前。
時計塔に所属し、高等教育を受け始めた間もない頃のこと。

彼の転機それは、"隠匿術"との出会い。
これがどうしたことか。彼の魔術回路とうまいこと合致したのか上達するは上達する。

イライジャ・キャベンディッシュには、一種異様な趣味があった。
それは、"瞳の収集"。
美しい瞳、変わった瞳、高価な瞳。

そのどれもこれもが彼の瞳には魅力的に映り、手を出したのが成人を迎えた誕生日。

１つくり抜けば、２つも３つも大差ない。
一度人道を踏み外した彼が脱線していくのは一呼吸。
然程、抵抗感もなかったのだろう。それは、それに勝る高揚感があったから。

つまり、イライジャにとって"隠匿術"との出会い。
それ自体が運命のような天命のようなものであり、今まで上達しなかった魔術もこれのためになし得なかったと考えればなんら不思議は感じなかったのだろう。

彼は壊れていた。
いつからか等、預かり知らない。

時計塔に所属した時か。それとも、成人したその時か。それとも、次男坊としての迫害を受けた時か。はたまた、生誕したその時か。

なんだって、なにもかもがどうでも良かった。
それは他でもない彼自身が彼に関心がなかったから。

いつどこで死のうと殺されようとどうだって良い。

今が楽しければなんだって良かった。

だから今もこうして、お得意の隠匿術を用い、お手頃の標的(ターゲット)に手をかける。
それがたとえ、魔術師でさえない。抵抗する力量さえない老人だろうと関係はない。

「悪いな、爺さん。だけど、俺もいくら生に執着がないといっても簡単に死ぬわけにはいかないんだわ。となりゃあ、弱者から責めるのは自然の摂理だろ？…というわけだ。バーサーカー。一歩でも動いてみろ？動けるものならな」

一瞬の隙をつき。
喉元を捉え、薄皮を切りつけ。苦痛に歪める表情と言ったら至高の味。

が、気に食わないのはこの瞳。
恐怖を滲ますことなくこちらを見据える瞳は全くもって気に食わない。