【Fate/Grand Order】人は、何を想い、何を願うのだろうかⅠ【派生作品】 (ページ36)

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日没を迎えるそんな時分。
戦闘を始めるにはまだ些か早いが、事態が事態なだけに致し方ない。

両者一歩も譲らぬ空間は、一方が前進するも後退するもなく、ただ向き合い言葉のみを交わした。

「とんだ言いがかりだ。僕がお前の妹を連れ出したところでなんのメリットがあるんだよ」

「むしろメリットだらけだろ？千尋めっちゃかわいいし！むしろお前、千尋のこと好きまであるじゃん？だとしてもこのやり方はだめだよなぁ。ちゃんと正面切って、恋愛しないと」

「だ、誰があんな馬鹿好きになるんだよ！そんなのは相当な物好きだ」

「素直じゃないよなぁ、お前って。ほら、お兄ちゃんが話し聞いてあげるから。ん？ほらほら、まずは歩み寄ってゆっくり、な？」

「ち、近づくな…それ以上近づいたら殺すぞ。この馬鹿遠坂！」

へらりと笑みを浮かべ、ジリジリと距離を詰める弓陣営に、顔を真っ赤にし後ずさる剣陣営。

両者サーヴァントといえばそれを見守る形をとるわけだが、若干の微笑ましささえ伺える空気が流れるのは言うまでもなく。

「俺はお前が嫌いだ。いつも余裕な顔して、なにも持っていない癖に。大した実力もないくせに。それなのに、へらへら笑ってるお前が嫌いだ！！」

「嫌いは好きの裏返しだろー？なあ、聡太。お前さ、もっと自分を大切にしてやれよ。でないと、本当に」

「余計な世話だ。僕はお前が嫌いだ。そしてお前に勝って僕は、僕は…っ」

認めてもらうんだ。

今度こそ。そう今度こそ。

「本気で僕と戦わないなら妹の命は保証しない。だから本気でかかってこい、遠坂。僕は本気だ」

「んー…。俺もお前の実力は認めてるつもりだよ。本気でやるっていうならやるけどさ。まあ、お前、一度言い出したら聞かないとこあるし。しゃーねぇ。やるか」

「セイバー！」

「アーチャー」

がしがしと雑に自身の髪をかき、紅蓮の英霊に戦闘の意志を伝えるも、前に出たまではいいが、様子が可笑しい。

かたかたとそれは怯えるでもなく、武者震いのそれとも異なる震えか。
一体どうしたものかと横からひょっこりと顔をだし、当人の表情を伺うもどうしたことか。
出逢ってから今日までこんな彼の表情は一度だって見たことはない。

頬を紅潮させ、まるで憧憬を意味するかのような表情を浮かべ相手を見据えているではないか。

まさかとは思うが、この男。
セイバーに一目ぼれした、なんてことはないよな？