【Fate/Grand Order】人は、何を想い、何を願うのだろうかⅠ【派生作品】 (ページ32)

今日:12 hit、昨日:11 hit、合計:16,387 hit

star*29 ページ32

.

"王は、人の気持ちがわからないのですね"

遥か遠い過去。
生前に言われたこの言葉が頭から離れない。

私は民の幸せを願い、誰よりも民のことを考え、選ぶべき道を選択してきたつもりだった。
それが時に厳しく残酷な選択になったとしても、それで多くを救うことができるのなら迷わずに選択した。

たとえ、自身が犠牲になることになろうともその選択は等しく訪れただろう。

だがその選択もまた正解ではなかった。
であればあのとき私は、王としてどうすべきだったのだろうか。
どこから道を違ってしまったのだろうか。

やり直せるものならやり直したい。
けれど私は、その答えを見つけられずにいる。これでは、以前と同じではないか。

そして、サーヴァントとして現界した今、また同じ問題に帰着してしまった。

"お前になにがわかるのか。すべて手に入れたお前に自分の気持ちなどわからない"、と。

マスター、私は決してすべてを手に入れたわけでもすべてを成功させたわけでもないのです。
私はまた同じ過ちを犯したのか？
マスターのことを考えての発言をしたつもりだった。
だがその先に待っていた返答は"拒絶"と"嫌悪"。

かつて向けられた視線が蘇る。

どうしていつもこうもうまくいかないのだろう。

「セイバー。正義感の強いお前からみたら僕のやり方は汚くて卑怯でとるべき策ではないってそう言いたいんだろう？けどな、誰だってお前みたいに(シャーロット(あいつ)のように…)真っ向から向き合ってまともに戦闘できると思ったら大違いなんだよ！」

違う。違うのです。マスター。

以前よりも私は民の心に、相手の心に気持ちを割けるようになったのです。
まだ不完全かもしれないが、それでも、それでも…っ

「違います、卑怯などそんなこと…。聡太、聞いてください。私は、勝利のためにどんな手でも使うことに直接的な嫌悪感を覚えているわけではないのです。けれど、そのやり方に貴方自身が納得をしていないから。だからこうして止めているのです。本来の貴方が望んだやり方ではないのでしょう？ならば、別の手をとるべきかと…そう思っているだけなのです」

彼はいつだってそうだった。
彼を苦しめている闇はいつだって彼自身で。
彼のことを嫌っているのは他でもない彼自身だった。

そんな彼の気持ちはどこか私の中にある闇と類似していたから。
だからこんなにも放っておけないのかもしれない。

違いますか。マスター。