【Fate/Grand Order】人は、何を想い、何を願うのだろうかⅠ【派生作品】 (ページ28)

今日:3 hit、昨日:11 hit、合計:16,378 hit

star*25 ページ28

.

「エレナ、あちらの方はお知り合いですか」

「ふふ。いいえ、けれどしーくんもよく知る存在。あちら側の方…かと」

「成程、道理で」

人の気配がしないわけですね。

「そういえば、牛乳は良かったのですか」

「外出したのも口実ですから」

「そうでしたか」

そんな夕焼けに照らされる尊い存在を目にすると、伏せ目がちに笑みを浮かべる。

また、彼女もまたそんな彼を目にすると、ぷくりと頬を膨らますそんな夫婦。

とてもではないが、かつてあの死線を潜りぬてきた彼らとは思えないほどの平和で温かな二人に周囲の目には映るだろう。

「口実は…碧さんのことだけではないですがっ」

「ふふ。私も貴方と久方ぶりにこうして2人の時間をとることができて嬉しく思いますよ」

「…っ、本当にずるいんだから」

「申し訳ない」

閑話休題。

そんな夫婦の会話を背に橋からの夕暮れに思いを馳せる女性がひとり。

自身の拠点へと帰る気にもなれないのか、ただただ暮れていく夕陽を見つめていた。

「お嬢さん。身投げは良くないですよ、どうか思い留まっていただけないだろうか」

そんな彼女を今にこの川に飛び込むのではないかと勘違いをしたのだろう。

声をかける御仁に少し驚いた様子で振り向くのだった。

「私はそんなに思い詰めた顔をしていましたか」

「今にも飛び込みそうな気がしてしまって…申し訳ない。今は平和だが以前ここも荒れた時期がありまして。あの時の私と同じ顔をしていたものだから…」

車椅子に身を任せ、なにか尊いものを思うようなそんな視線に笑みをこぼすシャーロット。

声をかけてくれた御仁が、マスターのひとりであることは魔術師である彼女からすれば把握できることも当然。

つまり、知らない素振りで声掛けてくるあたり彼はおそらく魔術師ではない参加者なのだろう。

嗚呼。なぜこのような戦いに魔術師ではない者まで巻き込まれるのだろうか。

「ひとつ。伺ってもよろしいでしょうか」

「こんな私でも答えられることならば、お答え致しましょう」

「何故人は戦いに身を投げるのでしょうか。失礼ながら先程のお話しを伺うに、貴方はかつて戦いに身を投じた方かとお見受けしまして…貴方のような優しい方が何故…」

理由を聞きたい。
その先を見た者がなにを思いなにを感じたのか知りたい。

「そうですね。存外…悪いことばかりではなかったから、でしょうか」