【Fate/Grand Order】人は、何を想い、何を願うのだろうかⅠ【派生作品】 (ページ11)

今日:16 hit、昨日:11 hit、合計:16,391 hit

star*08 ページ11

.

　英霊となればここまでの風格と威厳を持ち合わせるのかと初めて目にする彼につい頭を下げそうになる。それほどに彼の存在は強大であり、その碧(あお)の瞳は深くシャーロットの奥底までを見据えていた。

ならばこそ、この瞳から視線を逸らすようなことはしてはならない。

彼にはおそらく私のすべてを理解されている。嘘や偽りはなんの意味もなさない。
今、私は彼に試されている。

そう心に１つ言い聞かせれば、利き腕である左手に宿る赤の刻印を決意に胸を張り彼女は凛とした眼差しを彼へと向けるのだ。

「我が名はシャーロット・エインズワース。エインズワースの名にかけ、この戦いに全力を尽くすとここに誓わせてもらおう。どうか、この私に力を貸してもらえないだろうか」

「であれば、今一度問う。汝は聖杯になにを願うか」

「……願いはない。あのような趣味の悪い願望器に願ってやるほど、私の願いは軽いものではないのでな」

願いとは自身で叶えてこそ、喜びを得られるというもの。

それを他人の力で…ましてや他者の犠牲の上に成り立たせるなど言語道断。

「であれば、なんとする。何故、此度の戦に名を連ねたか」

「私が来なければ愛おしい妹弟が送られることとなる、それが耐えられなかったからだ。…それにだ、こんな馬鹿げた儀式は繰り返してはならない。だから、私はなんとしてでもこの戦いを終着させてみせるという意思でこの場に立っている」

「容易なことではないことは理解できているのだな」

「嗚呼…わかっている。私のなそうとしていることはこれから相手をするマスターたちすべてを敵にするような行いだ。だがな、アサシン。貴方もあながち私と同じ考えを持っているのではないのか」

その仮面の奥に隠された表情は見て取れない。
けれど、私の召喚に応じたのだ。確固たる自信はない。根拠もない。

けれど、思いを通わせたからこそ応じてくれたのだとそう信じたいから。

ただ、ひたすらと真っすぐと彼の瞳を見据えた。

「見事。その確固たる覚悟、確かに聞き届けた。我の使命もまたあの願望器の破壊…目的は同様であることは確か。なれば暫しの時を汝に捧げよう」

「嗚呼、よろしく頼む。貴方のような英霊に巡り合えることができ幸せに思うよ…心からね」

共に握手を交わせば、先程とは少し柔らかくなった視線に口元が緩むのだった。