幸村くんバースデー記念(番外編) ページ10
『精市くん！』
立海のみんなにサプライズパーティを企画してもらい、アクシデント(赤也がうっかり俺にバラしてしまったり、みんなが隠れて俺を驚かそうとしている中で赤也が隠れきれていなくて見えてしまったことでサプライズがサプライズじゃなくなったり)はあったものの、この誕生日は俺の一生の思い出になった。
テーブルに置かれた俺の好きな花を眺めていると、Aが楽しそうな声音で俺に声を掛けた。
『今日は楽しかった？』
「うん。最高の思い出になったよ。」
思ったことを素直に言うと、Aは更に嬉しそうに頬を弛ませ、でしょ、と誇らしげに笑う。つられて微笑んだ俺に、Aは袋をずいっと押し付けた。
『あのね、僕からのプレゼントだよ。もうみんなからのやつは渡してあるけどやっぱり僕、個人でも渡したくて。それでさ、覚えてる？初めてお誕生日祝ったときのこと。』
照れ臭そうに笑ったこの子は、昔から全然変わっていないようにみえて、本当に成長していた。俺の誕生日の筈なのに、いつの間にか心の中で我が子の成長を喜ぶ親の気持ちになっていた自分に笑いそうになったが堪え、平然と答えを返す。
「覚えてないな。」
『だよねえ。』
「いや覚えてないのかよ！！」
近くにいた丸井が突っ込んだ。そもそも俺とAが会ったのは物心つく前だったから仕方ないよね。
「物心つく前って…」
「まあまあブンちゃん、邪魔はよくないぜよ。」
変な気を遣った仁王によって丸井は回収された。急に静かになって、俺とAは思わず笑った。今日は笑ってばかりな気がする。
『改めて、お誕生日おめでとう、精市くん。』
「ありがとう、A。」
『僕はこれからもずっと精市くんの隣でお誕生日を祝うよ！』
それは去年も、一昨年も、ずっと前から聞いてる。毎年それを聞いて俺は安心するんだ。Aがずっと隣で、俺はずっと面倒をみれるんだ、って再確認できるから。
「じゃあ俺も、ずっとAの隣で誕生日を祝うよ。」
『ふふ、約束だよ！』
去年、ずっと、なんていう不確定で曖昧な言葉を信じて、俺はそれを明日を生きる力にした。きっと、これから先に何があっても、俺もAもそうやって生きていくと思う。
「ああ、約束だよ。」
強くなっても、環境が変わっても、それだけは変わらない。一年後、また同じように“ずっと”と言えるように。
(さて、パーティが終わったら提出用の課題を終わらせるよ。)
(今日くらいは忘れてよ精市くん。)
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作者名：海道蓮 | 作成日時：2019年5月5日 11時
