【テニプリ】幸村ママ【立海】 (ページ9)

今日:4 hit、昨日:2 hit、合計:32,386 hit

5 ページ9

*

Aを部室まで連れ出し、その場に正座をさせた。小動物のように縮こまったこの子は、いつもの説教のときのように怯えている。俺は呆れたように溜め息を吐き、口を開いた。

「どうして俺を避けるの？」

『…避けてるつもりなんてなかった……僕はドジだから、精市くんに迷惑かけたくなくて、ドジを直そうと思って…でもうまくいかなくて…せめてドジ踏んでも精市くんに迷惑かけないようにって』

震える声で紡がれる言葉を遮り、額にデコピンをかました。案の定何が起こったかわからない、という顔で俺を見詰めるこの子の瞳は本当に純粋だ。

「俺が迷惑だなんて言ったことがあるかい？」

『…でも』

「君はドジで危なっかしくて、放っておけないのは確かだ。でも、迷惑だと感じたことは一度だってないよ。」

まだ不服そうな表情を浮かべるA。いつからこんなに気を使えるようになったのか。俺にまで遠慮をするなんて、あまり喜ばしくない成長だ。

『…テニスをしているときの精市くん、すっごくきらきらしてて、本当に大好きなんだ。またこうしてテニスをできるようになったのに、僕のせいで負担かけて…倒れちゃったらどうしようって…』

＿＿違うな。こんなふうに思わせているのは、間違いなく俺のせいだ。

俺がいなかったあの空白の時間、この子は誰よりも心配して俺の帰りを待っていたのだ。

「…ほんと馬鹿だね。寧ろ今のままの方がストレス溜まるし、倒れそう。」

『えっ…だ、大丈夫!?救急車呼ばなきゃ』

再びデコピンで言葉を遮った。意地悪い冗談だけど、俺を避けた罪は重いからね。例え俺を思ったことだとしても、今回ばかりはそう易々と許すつもりはない＿＿と言いつつ。

「……また次同じことしたら、本当に怒るからね」
『以後気を付けます』

何だかんだで許してしまう。つくづく俺はこの子に甘いな。

(精市くん…本当の本当に救急車呼ばなくていいの？)
(だから大丈夫だって…)
(本当に？(しつこい))
(…怒るよ)
(ごめんなさい)