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幸村くんを本気で怒らせたら、多分世界が滅ぶと思うのは俺だけではないはず。もはや魔王の域だ。
「さて、真田達が待ってるから早く行こう」
『う、うん…』
まだ幸村くんに怯えているAは俺に引っ付きながら弱々しく返事をした。
それを見た幸村くんは面白くなさそうな顔をして「ふぅん」と呟く。もうそれだけで怖い。
「A、お説教追加で今からやるよ。」
『エッ』
死んだ目をしたAが俺に助けを乞うが、もう無理だ。逆らったら俺まで説教だろい?勘弁してくれ。
「…ということで丸井、真田達に伝えておいてくれないかな?」
「了解了解。死ぬなよ、A…」
『ブン太くんそれフラグだよ!?』
あばよA、お前は本当にいい奴だったぜ…絶対忘れねぇよ、と心の中で手を合わせ、静かに二人を見送った。
*
「……だいたい、口が軽すぎるんだよ。それに忘れてって言ったこと忘れてくれないくせに、宿題とか肝心なことは忘れるなんておかしいよね?俺がいつも言ってることなのにこっちを忘れるなんておかしいね。特に今回は一週間も前に出されたものなのに。先週、ちゃんと宿題やったか訊いたら今日やるって言ってたよね?俺に嘘吐くなんていい度胸だよ全く。」
俺が早口でそう捲し立てると、Aは小さく『ごめんなさい』と謝った。
「そうやって謝るけど、また同じこと繰り返すよね?そういうところの意識が足りないんじゃないかな。」
部員には「言い過ぎ」だの「もっと言い方を優しく」だの言われるけど、これくらい言わないとこの子は人に甘えて何もできない子になってしまう。
俺が厳しく説教をするのは、Aのためを思って言っていることだっていうのは、ちゃんと伝わっているはずだから。
『精市くん…僕、不器用だから同じ失敗して、また同じこと言わせちゃってごめんなさい。気を付けてはいるんだけど…』
大きな瞳に涙を溜めながらも俺の目を真っ直ぐ見据えてしっかり謝るA。全く、君が不器用なことくらいずっと傍にいる俺が知らないわけないじゃないか。
「知ってる。だからできるようになるまで何回でも言うからね。」
『精市くん…!』
キラキラと輝く瞳でこちらを見るAがあまりにも可愛くて、なんだか怒る気が失せた。「今日のお説教は終わり」と告げると、Aは間抜けな顔をして固まった。
(えっ放課後のやつは…?)
(えっやってほしいの?)
(いやご遠慮させていただきマス)
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作者名:海道蓮 | 作成日時:2019年5月5日 11時