恋味チョコレイト(青)

6.意外と強引 ページ6

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まず、深呼吸。
落ち着こう、落ち着いて話を整理しよう。



「えっと、その、ヤスくんが私を？」

「せやから僕は山田さんのことが好きで」

「・・・はい」

「僕の性格は同じ部署やから知ってもらえとるとして」

「・・・はい」

「同僚から恋愛対象に見てもらって。
1週間後に返事が欲しい、って話なんやけど」



あかんかなぁ？なんて。
首をかしげるヤスくんは、いつものカッコ良さに可愛さ上乗せで。



「それでもし、その・・・OKやったら山田さんからのチョコレートが欲しいんやけど」



1週間もいらないんだけど。
今すぐにでも私も好きですって言いたいのに。



「あの、えっと・・・その、」

「分からんこと、ある？」

「何で12日？バレンタイン、14日だけど・・・」



本当に言いたいことは違うのに。
何でそんなどうでもいいことを聞いちゃうの、私！



「恋人でもないのに、山田さんの14日を予約出来んし」



それに14日の山田さんの相手は大倉かも。
なんてヤスくんは小さな声でそう付け足したけど。



だからね、それが1番の誤解なのに！



「あの、ヤスくんっ」

「連絡先、交換しよ」



ね、ってスマホと笑顔を向けられたらそれ以上何も言えなくて。
もう完全にヤスくんのペースで。
ふるふるするとLINEの画面に追加される《章大》の文字。



「章大、ってのが僕」

「名前くらい知ってるのに」

「あ、そっか」



下の名前はもちろん知ってたけど。
改めて《章大》なんて、ヤスくんが自分の名前を名乗ることが新鮮で。
聞き慣れないその言葉が私の耳の中で、何度となく繰り返されていく。



「じゃあ、よろしくお願いします」



礼儀正しく頭を下げたヤスくんとの、不思議な1週間はこうして始まった。

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